日朝軍事衝突リスクを高めかねない安保法制…若者、SEALDsの声は安倍政権に届くのか?
イランの核開発問題をめぐって、米英独仏ロ中の欧米6カ国とイランは14日に核問題の包括的解決に向けて最終合意に達したが、しかし、この合意に対して苦々しい思いで見ている国が北朝鮮だ。
北朝鮮は5月、「米国の圧力に屈しないイラン」という論評を通じて、核開発問題をめぐるイランと米国などとの交渉について言及。「イランは、国の自主権である平和的な核活動の権利を固守しようとしている」とイランの核開発に熱烈なエールを送っていた。
核問題で米国に一歩も退かない姿勢を見せている北朝鮮からすれば、欧米6カ国と合意したイランに対して「この裏切り者め!」という思いを抱いていることは容易に想像できる。
そうでなくても、北朝鮮包囲網はどんどんせばまりつつある。北朝鮮にとってはイランと同じく盟友のキューバも、今月20日をもって54年ぶりの国交を回復することで合意した。
オバマ大統領は、キューバとイラン、そして北朝鮮の3カ国の名を挙げて「敵との握手」を約束していたが、残るは北朝鮮一国。しかし、当の北朝鮮の反米姿勢は、一向に弱まる兆しを見せない。北朝鮮は、オバマ氏に対しては二度も「黒いサル」とヘイトスピーチで罵倒。感情的といえるほどの反米姿勢を打ち出している。
一方のアメリカも核・ミサイル問題のみならず、人権問題で北朝鮮に妥協する姿勢を見せていない。とりわけ、今も行われている残虐な公開処刑の衛星画像などを活用しながら「人権攻勢」の手を緩めそうにない。
米朝対話の突破口は見えないなか、北朝鮮の対米姿勢は今後どんどんエスカレートしていくことが予想されるが、これは日本にとってまったくの他人事ではない。折しも昨日(15日)、与党は、安保法案を強行採決、可決したが、結果的にこの法制度が日朝間の軍事リスクを高める可能性があるのだ。
安倍内閣は、「北朝鮮の弾道ミサイル開発」に対して備えなければならないと述べている。しかし、北朝鮮は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を開発しており、これが実戦配備されたとする。安保法案成立後は、日米ガイドラインに基づき、北朝鮮の潜水艦に対して場合によっては攻撃しなければならない。
これが何を意味するのか。日本の軍事力からすれば、北朝鮮の潜水艦を撃沈することなど、たやすいことだろう。しかし、北朝鮮は「事実上の核保有国」である。一歩間違えれば核保有国と戦争になる危険性があるのだ。
北朝鮮の核ミサイルについて、米本土に到達可能かどうかと論じられることがあるが、核弾頭の小型化という技術的ハードルがあるにせよ、理論的には日本は既に「射程距離圏内」に入っており、核ミサイルの脅威にさらされているのだ。
こうした軍事バランスについて見て見ぬふりしたままの安保法制議論は、まさに「本当の意味での北朝鮮の脅威」を隠蔽していることに他ならない。
もちろん、日本国民が議論を尽くして、北朝鮮の脅威を踏まえたうえで、安保法制に賛成するのなら、それは国民の意思だ。しかし、「今そこにあるリスク」を論じず、または直視せずに隠蔽したうえでの可決という強引なやり方は、まさに北朝鮮そのものやり方であり、やはり賛同できない。
今回の強引な法案可決は、さすがに国民からも反発をまねいている。とりわけ大学生グループ「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」が、気を吐いているが、若者の声に代表される抗議の声に安倍政権と与党は真摯に耳を傾けるべきだ。それができないようならファシストのレッテルからは逃れられない。