「死者数は当局発表を上回る」北朝鮮・洪水被災地の最新画像
韓国と北朝鮮の間で高まっていた軍事衝突の危機は、25日の南北合意によってひとまず収まった。
北朝鮮は、南北合意文を通じて「遺憾の意」を表明し、事実上の謝罪をしたわけだが、その一方で朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議を開催し、金正恩第一書記は、「平穏は核抑止力を中心とする軍事力で成し遂げられた」と、あくまでも北朝鮮が優位な立場で合意したことを強調した。
一方、会議では北朝鮮北東部の羅先(ラソン)市が「大洪水に見舞われた」と言及している。軍事的緊張の話題に隠れていたが、九州、沖縄、韓国に被害をもたらした台風15号(国際名コニー)が、北朝鮮にも被害を及ぼしていた。
北朝鮮の朝鮮中央テレビは26日、大雨が降ったことを伝えているが、デイリーNKは、北朝鮮内部情報筋が撮影した被災地の最新画像をいちはやく入手。画像を見る限り戦場さながらの深刻な被害を及ぼしていることがわかる。
内部情報筋によると、朝鮮中央通信は死者40人と発表しているが、「実際の被害もそれより多い」と語る。一般家屋だけでなく、市内はもちろん、内陸の工場、企業所の被害は甚大だ。
先述のように、羅先市の被害については朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議で「羅先市被害回復戦闘指揮本部を組織した」と伝えているが、28日の時点では、現場ではこれといった対策は取られず、現地住民からは次のような不満の声があがっている。
「北朝鮮当局は何もしてくれない。医薬品などあるわけない。水源が汚染されていたら、飲水の確保も難しくなる」
北朝鮮では、毎年水害の被害が起きるが、その根本的原因は、国家が責任を負うべき「防災インフラ」が整備されていないことにある。
金正恩氏は、今回の南北合意について「核兵器で国を守った」と自画自賛しているが、まずは北朝鮮住民の命と生活を守ることに目を向けるべきだ。