北朝鮮の「日本人妻帰国」提案を日本側が拒否…本当にそれで良いのか!?
今日の朝日新聞朝刊の1面トップ記事(東京本社14版)によれば、日本政府は、日本人拉致被害者らの再調査を巡る北朝鮮との非公式協議で、北朝鮮側から提案のあった日本人妻(配偶者)の帰国を拒否していたという。
といっても、この記事で日本人妻の問題に触れているのはほんの一部分だ。内容の中心は拉致問題であり、その次が日本人の遺骨問題。日本人妻の優先度は最も低い。
筆者はこうした日本人妻の扱われ方について、常々問題があると思ってきた。
日本政府が北朝鮮側の提案を拒否したのは、先方が拉致被害者の調査結果について従来の同じ主張を繰り返しているためだ。「拉致被害者を置き去りにし、日本人妻の帰国でお茶を濁させるわけには行かない」という日本側の立場は、ある程度は理解できる。
しかし、日本人妻やその子供たちの人権もやはり、他の人々と同様に尊いものだ。
そもそも、日本人妻らが北朝鮮に渡ることになった在日朝鮮人の帰還事業は、朝鮮総連や日本のマスコミが北朝鮮について「地上の楽園」と実態とかけ離れた宣伝を行う中で実施された。「自ら希望して行ったのだから仕方ない」との切り捨ては当てはまらない。
日本政府はもしかしたら、日本人配偶者とともに、現地で生まれた北朝鮮国民であるその家族が、日本へ大量に流入することを恐れているのかも知れない。北朝鮮担当者がたった6人しか配置されていない外務省に、そうした懸念を乗り越えるのは極めて難しいだろう。
しかし考えても見てほしい。北朝鮮は今、国連で国内の人権抑圧を追及され、窮地に立たされている。そんな中にあって、体制による虐待の生き証人である日本人配偶者を、大量に日本へ送り返すなどできるだろうか?
北朝鮮側が、体制に従順な一部の日本人配偶者だけを送り返そうとする可能性もあるが、だったらむしろ、日本側は「亡くなった配偶者についてもひとり残らず情報を出せ」と要求すべきだ。北朝鮮側がそれに音を上げて、むしろ拉致問題で手を打とうとする可能性についても検討してみるべきなのだ。