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中国で失踪…北朝鮮「美人接待員」たちの素顔

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
カンボジアの北朝鮮レストランのウェイトレス

北朝鮮は外貨獲得のため、容姿端麗な女性らを中国や東南アジアなどで経営するレストランに「接待員」(ウェイトレス)として派遣している。

歌や楽器の演奏、踊りにも長けた彼女らは、地元の人々や韓国人ツアー客の間でなかなかの人気を誇っている。筆者も2014年にカンボジアの北朝鮮レストランを訪れたが、タイトル写真の「美人接待員」は男女限らず韓国人の注目を集めていた。

現代韓国の女性には見られない古風でしとやかな立ち居振る舞いは、中年の韓国人から好感を持たれている。また近年では、特に容姿端麗なウェイトレスの写真がネットで出回り、韓国の若者たちの間でアイドル並みの人気を博している例もある。

そんな彼女らが、中国の北朝鮮レストランから忽然と姿を消す事件が頻発しているという。

どうやら、本国から彼女たちに同行している監視役が裏で何らかの動きをしているようなのだが、具体的な情報はまだ伝えられていない。

北朝鮮レストランは存在感の割に、その内情についてはあまり知られていない。

実は、店の多くは完全な北朝鮮の国営ではなく、現地資本との合弁事業として営まれているという。価格設定は、地域にもよるが割と高めで、中国の観光地にある店などは、駐車場にベンツやポルシェなどの高級車が停まっていることも珍しくない。

気になるのは女性らの日常生活だが、仕事はかなりハードだ。店の営業を終えた後には歌や踊りの稽古が待っているが、本人たちは、「夕食が遅いので、そのまま寝ると太っちゃう。練習をするのがちょうど良いです(笑)」と、意外と屈託がない。

実は、彼女らの多くは良家のお嬢様なのだ。接待員を養成する専門学校も「狭き門」だという。つまりは「才色兼備」のエリートであり、国に帰って結婚相手を探す際にも、北朝鮮レストランでの勤務歴は有利に働くという。

それでも、中には自由を求めて韓国などへの「脱出」を決行する女性らもいると聞く。長く海外で暮らすうちに、彼女らの意識にも様々な変化が起きているようだが、中には客として訪れた外国人と恋に落ち、「愛の逃避行」に走るケースもあるのだろうか。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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