抵抗したら殺せ…北朝鮮拉致指令の動かぬ証拠

金正恩氏

11日、東京新聞が衝撃的なスクープを放った。

同紙は、北朝鮮が工作員を養成する平壌の「金正日政治軍事大学」にて、スパイ教育に使用される内部資料を入手。「拉致」の方法などが具体的に記されているという。デイリーNKでも何度か北朝鮮の内部資料に関するスクープ記事を放っているが、これほどの資料は滅多にお目にかかれない。素直に脱帽と言わざるを得ない。

内部資料の詳細に関しては、本日(11日)付の東京新聞に詳しく掲載されているが、今回の資料によって北朝鮮が国家主導で「拉致」を行っていたことが改めて明らかになった。これは拉致問題を解明するうえで大きな意味を持つ。

北朝鮮の拉致が初めて明らかになったのは2002年だ。故金正日総書記は、小泉純一郎首相と会談し日本人拉致を認めた。この時、正日氏は「80年代初めまで特殊機関の一部が妄動主義に走って」と苦しい弁明に終始した。

しかし、今回の資料は2011年まで工作員養成過程で使用されていたという。金正日氏の過去の弁明を覆すことになる。

東京新聞が入手した資料には、拉致の具体的な手段などが記されており、拉致対象が抵抗したら「処断も可能」(殺害)と記されているという。そのやり口も、銃殺、毒針、毒薬をはじめ「処断の方法は、実にたくさんある」と、極めて生々しい内容だ。

この中に筆者が気になった殺害手段がある。

「毒針」だ。

2000年頃、中朝国境で朝鮮人民軍に所属する軍人に話を聞いた時のことだ。脱北者ではなく、中朝を往来しながら何らかの工作活動をしていたようだが、その詳細についてはお互いの安全問題もあるから一切触れなかった。

話のなかで、軍人は「自らが危ない場面に出くわしたら毒針を使うこともある」と述べた。にわかに信じられず、話半分に聞いていたのだが、北朝鮮の工作員が「毒針」を駆使することを改めて知る機会があった。

2006年に韓国・ソウルで黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)氏にインタビューする機会があった。北朝鮮を亡命したなかでも最高幹部クラスだけに、非常に厳しいセキュリティチェックを受けた。この時、韓国のボディガードは、ボールペンの先をチェックした。筆者が「毒針ですか?」と問うと、ボディガードは「北朝鮮の工作員の常套手段だから」と教えてくれた。

2011年に韓国で対北朝鮮ビラ活動を行っている脱北者に対する殺人未遂事件が起きたのだが、容疑者は脱北者に偽装した工作員で毒針などを所持していた。

この工作員は朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の空挺部隊出身で、脱北者の間では「武闘派」として知られていたという。同年11月にも脱北者に偽装したスパイが拘束されている。

今回、東京新聞が入手した資料が、金正恩第1書記が最高指導者になった後も、使用されているのかは不明だが、新たな工作員教育資料が作成されている可能性は充分ある。

自国民に対しては、気に入らなければ大口径の高射砲で文字通り「ミンチ」にして処刑。そして罪のない他国民を拉致し、体制に都合の悪い人物に対しては暗殺も厭わない。

こんな冷酷非道な政治と反人道的な海外工作活動を続けている限り、北朝鮮の人権問題は永遠に国際社会から追及され続け、金正恩第1書記の未来は暗いということをいい加減に知るべきだ。