トイレ問題も解決できない金正恩氏のあきれた脱北防止対策
北朝鮮は、慢性的な電力不足に悩まされている。昨年9月、金正恩党委員長は「白頭山英雄青年発電所」の建設場を現地指導。発電所1号機を眺めながら「本当に壮大だ、美男子のようにスマートだ」とポエムのような言葉で賞賛した。
空から汚物が
その一方で、金正恩氏の鳴り物入りで建設された平壌市内の「紋繍(ムンス)プール」で停電が原因の異臭騒ぎが起きている。水の浄化装置が稼働されなかったからだ。また、プールの中で放尿する子どもたちも多く、さらに異臭がひどくなった。
(参考記事:平壌市内のプールで異臭騒ぎ)
また、これも金正恩氏の肝いりで建てられたマンションの話だが、高層階では電力不足で水をくみ上げることができずに、信じられない方法で「トイレ(汚物)問題」を解決する住民がいるほどだ。
(参考記事:空から汚物が…「金正恩住宅」のトイレ問題が深刻)
こうした中、北朝鮮当局は中朝国境地帯で電力不足で動かない監視カメラを設置して住民から反感を買っている。
脱北者を問答無用で射殺
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、会寧(フェリョン)市の国境地域に設置している赤外線監視カメラの台数が2台から6台に増やされた。当局は、市内で最も脱北が起きやすいとされている遊仙(ユソン)労働者区、仁渓里(インゲリ)、鶴浦里(ハクポリ)、防垣里(パンウォンリ)で監視カメラの設置作業をしており、今年のうちに完了するとのことだ。
設置台数を増やした目的は言うまでもなく脱北防止。カメラを拡充する会寧から三峰(サムボン)にかけての地域は、密輸、兵士の脱走、脱北が頻発している地域だ。当局は、川幅が狭く、今後も脱北などが多発すると見て、積極的に遮断する動きを見せている。
もともと金正恩氏は、脱北行為に対して厳しく取り締まる方針を示してきた。先月中旬には、咸鏡北道の穏城(オンソン)郡南陽(ナミャン)労働者区から、住民2人が国境の河、豆満江を越えて中国に脱北しようとしたが、国境警備隊がそれを見つけ事前通告なしに射殺。脱北者を射殺した隊員は副隊長から表彰されたという。
(参考記事:金正恩氏が忌み嫌う「脱北」…逃げれば問答無用で射殺)
ただし、情報筋によると水害前から監視カメラは電力不足で1日に2〜3時間しか動いておらず、監視カメラを100台設置しても何の意味もないとのこと。また、カメラは高台に設置せざるを得ないが、どの範囲を監視しているのかバレバレなのだ。むしろ「ここ以外なら安全」という目安になりかねないという。
現地の住民は「あんなものを買うカネがあれば、食糧を買って配給しろ」「頼りないからと6台も設置するのか」との反応を示しているという。