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インテルの業績結果はサプライズ PC市場低迷も売上高は過去最高に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米半導体大手のインテルが10月14日に発表した今年7〜9月期の決算(PDF書類)は、売上高が145億5400万ドルとなり、1年前から7.9%増加、四半期の過去最高を更新した。

パソコン向け半導体は15%増加

インテルによると、パソコンやサーバー、タブレット端末、携帯電話などの半導体の出荷個数が過去最大となり、マイクロプロセッサーの四半期出荷個数が初めて1億個を超えた。

このうち、全売上高の大半を占めるパソコン向け製品の出荷個数は1年前から15%増加。種類別で見ると、ノートパソコンが21%増え、デスクトップパソコンが6%増えた。

このインテルの業績結果は、先頃米IDCと米ガートナーが公表した調査リポートと大きく異なる。両社は今年7〜9月期の世界パソコン出荷台数が1年前からそれぞれ1.7%、0.5%減少したと報告していた。

インテルは世界の大半のパソコンにマイクロプロセッサーを供給している。パソコン市場はまだ、緩やかな回復の兆候が表れていると指摘されている程度で、本格回復には至っていない。

こうしたことから今回の業績結果には驚いているアナリストも少なくないと米ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

サーバー向け半導体も好調

インテルの7〜9月期の売上高を事業別に見ると、パソコン向け事業「PCクライアント」は92億ドルで1年前から9%増加、サーバーなどの「データセンター」事業は37億ドルで同16%増加した。

このほか、モノのインターネットと呼ばれる「IoT(Internet of Things)」関連の組み込み機器向け半導体事業は5億3000万ドル。この部門は同社製品を広範な市場に広げようと力を入れている分野。

1年前に比べた伸び率は14%と好調だったが、まだ売り上げ規模は小さい。

タブレット向けは販促費用が膨らむ

一方でブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO)が2013年5月に就任して以来力を入れているもう1つの分野、タブレット向け半導体は苦戦が続いている。タブレット向け半導体を含む「モバイル&通信」事業の売上高は1年前から99.7%減の100万ドルにとどまった。

この部門の営業損益は10億4300万ドルの赤字で、赤字額は1年前の8億1000万ドルから拡大。同社はモバイル端末向け半導体で後れを取っている。そうした状況を打開しようとクルザニッチCEOは今年1年間でタブレット向け半導体を4000万個出荷するという目標を立てている。

ウォールストリート・ジャーナルによるとこの7〜9月期のタブレット向け半導体の出荷個数は1500万個で、四半期の目標数値を達成した。

だがインテルは目標達成のため、同社製品を採用するタブレットメーカーに対し補助金を支払っている。そのコストが同事業の業績を悪化させている。

なお7〜9月期の純利益は33億1700万ドルで、1年前から12.4%増加した。1株利益は同13.8%増の0.66ドル、営業利益は同29.6%増の45億4000万ドルだった。また粗利益率は65.0%で、同2.6ポイント改善。当期の売上高、1株利益、10〜12月期の売上高見通しは、いずれも市場予想を上回った。

JBpress:2014年10月16日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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