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米ネット広告まもなくモバイルがPC抜く見通し、2019年には米ネット広告市場の7割超に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米国の市場調査会社、eマーケターがこのほどまとめた米国ネット広告市場に関するリポートによると、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末向け広告への支出額が急速に伸びている。

2016年は転換点、モバイルがパソコン初めて上回る

これに対しパソコン向け広告は緩やな減少傾向にあるという。

昨年実績を見ると、モバイル広告の年間支出額は191億5000万ドル。パソコン向け広告は315億8000万ドルだった。これが今年はモバイルが287億2000万ドル、パソコンが298億9000万ドルと、ほぼ同規模になる見通し。

しかしモバイルは今後も伸び続け、来年初めてパソコンを上回るという。

モバイルは4年後に658億7000万ドルに達し、米国ネット広告市場全体の72.2%を占めるまでになる。一方パソコンは毎年250億ドル程度で推移すると、eマーケターは予測している。

同社がその根拠として挙げているのが消費者需要の変化。例えば米国成人が1日当たりモバイル端末に費やす時間は一昨年時点で2時間19分だったが、昨年は2時間51分に増えた。

これに対しパソコンは同じ期間に2時間19分から2時間12分に減った。

モバイル広告「ディスプレイ」が「検索」上回る

モバイル広告の種類別支出額を見ると、バナー広告や動画広告などの「ディスプレイ広告」が引き続き「検索広告」を上回る見通し。

昨年のディスプレイ広告支出額は96億5000万ドル、検索広告は87億2000万ドルだった。

これが今年はそれぞれ146億7000万ドル、128億5000万ドルになるという。ディスプレイ広告、検索広告はともに同水準の伸びで成長するが、その差は徐々に広がるとeマーケターは予測する。

同社は今回初めて、モバイルアプリ内広告と、モバイルウェブブラウザー広告の支出額をまとめている。

これによると、昨年のアプリ内広告への支出額は136億7000万ドル、ウェブブラウザー広告への支出額は54億7000万ドル、その比率はそれぞれ71.4%、28.6%だった。

これが今年は、207億9000万ドル(72.4%)、79億3000万ドル(27.6%)になるという。

アプリ内広告とブラウザー広告は今後好調に推移するが、伸び率はアプリ内広告の方が高いと、同社は分析している。

アプリインストール広告の規模はまだ小さい

最後に同社はここ数年注目されてきた「モバイルアプリインストール広告」について報告している。

これは、フェイスブックのニュースフィードやツイッターのタイムラインなどで表示される広告で、利用者にアプリのインストールを促すというもの。広告をタップすると、アップルの「App Store」やグーグルの「Google Play」といった配信先からアプリをダウンロートする。

この広告は、フェイスブックの収益拡大に大きく寄与したなどと伝えられ、注目を浴びたが、eマーケターによると、その市場規模はまだ小さい。

昨年の米国におけるこの広告への支出額は16億7000万ドルで、前年から115.5%増えた。今年はこれが同80%増の30億ドルとなる見通し。だが、モバイル広告全体に占めるその比率は10.4%にとどまり、米ネット広告市場に及ぼす影響はまだ小さいと、同社は指摘している。

JBpress:2015年3月27日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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