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EUROはベスト16が決定。GLベスト11は?

小宮良之スポーツライター・小説家
囲んできた敵を蹴散らす豪快なドリブルを見せるベイル。(写真:ロイター/アフロ)

6月10日にフランス、パリで開幕したEURO2016はグループリーグの日程が終了。試合終了間際に決着が付く展開がことのほか多く、拮抗した戦いだったことを物語る。連覇中のスペインは盤石に見えたが、クロアチアに敗れて2位通過(イタリアと対戦する)。ドイツは堅調で、フランスも開催国の意地を見せているが、どこも気は抜けない。ベスト16が出そろった決勝トーナメントは苛烈さを増すだろう。

その前に、GLを戦い抜いた猛者たちを振り返る。

「グループリーグのベスト11とは?」

熱闘を生み出したのは彼らだった。

グループリーグMVPはイニエスタか

GK ルイ・パトリシオ(ポルトガル)

派手さはないが、職人を思わせる。精緻で堅実。ハンガリー戦は3失点も、どれもどうしようもなく、むしろ決定的な1対1をストップ。ディフェンスラインと連係しながらコースを狭め、ポジションを微修正し、極力、シュートを正面に呼び込んでいる。アイスランド戦も1対1で最後まで倒れず、決定機をブロックし、流れを自軍に引き入れた。クラシックなGKで、スペイン伝説のGK、ホセ・アンヘル・イリバルを彷彿とさせるような重厚感。あるいはアトレティコ・マドリーで今シーズン、サモーラ賞(最優秀GK賞)を受けたオブラクも近い。

右SB ダリヨ・スルナ(クロアチア)

トルコ、チェコ戦と右サイドでは常に先手をとっていた。スペイン戦は完璧と言える内容で、ボランチ、右センターバック、右MFをうまく使い、重量感ある左サイドからの攻めを封殺した。決勝点の起点となるシュートブロックも秀逸。攻め上がりのタイミングが効果的で、キックのクオリティも高い。セルヒオ・ラモスのPKシーンは判定に激昂してイエローを受けながら、冷静にベンチのモドリッチ(マドリーでラモスとチームメイト)とやりとりし、キックのコースをGKに伝えた。リーダーシップと老練さが光った。

右CB ジェラール・ピケ(スペイン)

チェコ戦のヘディングによる決勝ゴールは値千金だった。しかし、それは彼の能力の一端でしかない。ポゼッションをスタイルにするスペインを、質の高い球出しによって支えている。ビルドアップのビジョンとスキルは比類がない。近年は集中力の低下からか、コンディションを崩して批判を受けたが、世界最高のセンターバックとして復調しつつある。カタルーニャ独立やマドリーへの敵愾心によって、自国のサポーターからもブーイングを受けるが、プレーに乱れがない。

左CB マッツ・フンメルス(ドイツ)

一挙手一投足がエレガントに映る選手だが、それはポジショニングで優っている余裕によるものだろう。冷静沈着。読みが良く、ヘディングの競り合い一つとっても、機先を制している。なにより、前につけるボールが正確で、一つ飛ばした前線への楔は芸術の域。背筋を凛と伸ばしてボールを持ち運ぶ様子は、まさにカイザー(皇帝)の形容がふさわしい。レーヴ・ドイツの心臓と言えるだろう。

左SB ジョルディ・アルバ(スペイン)

左サイドで風を巻き起こせる。あるいは、打ち込まれた火矢のようにも映る。バルサの下部組織「マシア」の同窓生たちである左インサイドハーフのイニエスタと左FWのノリートとの連係も抜群で、簡単に裏を取り、左からの攻撃を牽引する。ディフェンダーとしても、逆サイドまで絞って危機を回避するなど責任感が強い。攻めても、守っても、直感力に優れる。

ボランチ セルジ・ブスケッツ(スペイン)

前線に供給するフィードのスムースさは、スイスの高級時計のような精度。わずかな狂いもないことで、その後のプレー展開に余裕が生まれる。クロアチア戦のゴールもそうだが、歓喜の瞬間を巻き戻すと、悉くブスケッツのパスから始まっている。空間認識力が抜群に高く、守備でも一気にボールホルダーとの間合いを詰め、ショートカウンターの起点として好機を作り出せる。

ボランチ ルカ・モドリッチ(クロアチア)

ゴール前、サイド、中盤の底と、どのゾーンにいてもレベルの高いスキルを見せられる。驚嘆すべきフットボールIQのおかげだろう。どこにいても、どんなときも、求められるべきプレーを迅速に察知し、求められる以上のプレーを生み出せる。チェコ戦は後半途中まで2-0でリードしながら、モドリッチが足に違和感で交代後、追いつかれた。不在の在だった。

攻撃的MF アンドレス・イニエスタ(スペイン)

スペイン代表では左インサイドハーフでプレーするが、ポジションの枠を遙かに超え、フットボール・シアターを演出している。別次元のコンダクターだが、出し手としてだけでなく、一人や二人ならはがせてしまう。例えばチェコ戦、7人の敵選手に一人で囲まれたものの、少しも動揺していない。その裏に広大なスペースが広がっているのを承知しており、そこにパスを打ち込めば決定機になる。一本のパスに脳内を刺激される。今大会グループリーグのMVPだろう。

攻撃的MF アンドレ・ゴメス(ポルトガル)

戦術的な理解力に優れる。それだけに、目まぐるしくポジションを動かしながら、適切なプレータイミングを見つけられる。左サイドにいたかと思えば、中央でボールを動かし、はたまた右サイドで決定的なクロスを流し入れる。神出鬼没で、ジョアン・モウチーニョとのコンビプレーは白眉。ジョルジュ・メンデス代理人の秘蔵っ子には、覚醒の予感がある。

攻撃的MF ディミトリ・パイエ(フランス)

開幕のルーマニア戦は値千金の決勝点、アルバニア戦はだめ押し点を決めている。マルセイユ時代、名将ビエルサに薫陶を受けたパイエは、なにより一対一の鉄則において負けない。重心の低いドリブルでマーカーをはがすことで、状況を一変。シュートスキルも非常に高い。今大会のラッキーボーイと見られるが、フロックではない。

FW ガレス・ベイル(ウェールズ)

スロバキア戦、イングランド戦の左足FKは感動的だった。そしてロシア戦も3試合連続得点でウェールズのGL首位突破を牽引した。チーム力で劣る中、孤軍奮闘。最前線で敵に囲まれながらも、全身を勇躍させる姿は威風が漂い、アスリートとして美しい。決して器用な選手ではないし、ポストプレーで展開を作る技術などは凡庸だが、一人で試合を決められる肉体的雄偉さを持っている。

11人を独断で選出したが、他にも値する選手は少なくない。参考までに挙げておこう。

GKはブッフォン(イタリア)、右SBはクライン(イングランド)、CBはボアテング(ドイツ)、キエッリーニ(イタリア)、左SBはエブラ(フランス)、ボランチはジャカ(スイス)、ウィリアム・カルバリョ(ポルトガル)、ヘンダーソン(イングランド)、攻撃的MFはデ・ブライネ(ベルギー)、ノリート(スペイン)、FWはルカク(ベルギー)。

これからさらに2週間、英雄たちの戦いに心躍らせることになりそうだ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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