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巨人もついに低迷期?本当の正念場は今季ではなく数年後に訪れる

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

主力が投打共に結果を残せず

貧打。

巨人と言えば重量打線が代名詞だったが近頃はこの言葉をよく聞かれるようになった。今季も東京ドームを本拠地にしながら本塁打数43本はリーグ5位。大黒柱・阿部は体調が思わしくなく、ジャパンの4番を務めた村田も8番を打つなど鳴りを潜めている。12球団最下位の低打率.239ばかりに注目が集まるが打率よりも得点との相関関係が高いOPS.634も12球団ワーストの数字。昨季は.425だった阿部の長打率は.363、.410だった村田は.300と迫力を欠く。それでも下位に低迷しないのは投手陣が踏ん張ってきたからだ。ただ投手陣も万全だとは言い難い。内海は1試合に投げただけで抹消され、杉内も5月23日を最後に勝ち星から見離されている。エース・菅野が試合を作っている他はルーキー・高木勇、新外国人のポレダ、マイコラスと開幕前は未知数だった新戦力がローテーションを担っている状態だ。近年のペナントレースは打線の力で打ち勝つよりも投手を中心に失点を抑えることで制することが多い。JFKの登場以降はリリーフ陣の重要性が増した感があり特にその傾向が強い。阪神が得失点差では大きなマイナスを抱えながらも首位に立っているのは負ける時は大差で負けても勝てる試合は福原、呉昇桓のリレーで逃げ切る形が崩れなかったから。巨人にも山口、マシソン、西村の鉄壁の救援トリオがいたが、西村は2軍暮らしが続き、山口、マシソンも痛打を浴びるシーンが目立つ。

ゴールデンエイジ近辺の野手の迫力不足

投打共に主力が期待通りの成績を残せないことは大きな誤算だが、巨人にとってそれ以上に問題なのはレギュラーに割って入る若手の突き上げが乏しいこと。小林、大田、中井、橋本、立岡などが出場機会をつかんだがレギュラーとしての地位を確立するには至っていない。昨オフに加入した金城、相川はスタメンを張れる実力者には違いないが、連日オーダーに名を連ねるレギュラーとしての役割を期待して獲得したわけではないだろう。同じくベテランの井端もチームにとっては内野のバックアップとなることが理想だったはずだが、チーム状況がそれを許さず様々ポジション、様々な打順で試合に出場する日々が続いている。かつては資金力にものを言わせ、アマチュアのトップ選手と他球団の主力選手でオーダーが固められている時代もあったが、その後は自前で育てる方針に切り替わり戦力が充実している頃には野手のレギュラーも先発ローテーションもわざと1枠を固定せず、若手を競わせながら戦っている時期もあった。王者の風格を漂わせながら正に「育てながら勝つ」を実行していたが、30代後半から40代のベテランがオーダーに並ぶ今の巨人にその頃の余裕は感じられない。本当に強いチームは若手、中堅、ベテランがうまく融合しチーム力を高めるもの。セイバーメトリクスの始祖、ビル・ジェームズの研究によれば、典型的な野球選手というのは20代後半まで成長しそこから徐々に衰え始め、30代半ばになるとその傾向が強まる。ピークは精神的にも肉体的にも充実する27歳で迎えるという。もちろんあてはまらない選手も多数いるが、巨人で言えば坂本や澤村がこのゴールデンエイジのど真ん中というわけだ。チームリーダーとなった坂本は今季、そのポテンシャルを存分に発揮しているとは言い難く、その少し下の世代の選手達もベテランの牙城を崩せずにいる。この年代の選手層は厚くない。ファームで汗を流す若手と今でも第一線で戦うベテラン勢との間にポッカリと開いた大きな穴。レギュラー陣が引退を迎えた時、再び大補強に走るのか。

全チームが借金を抱えるなど史上稀に見る大混戦となっている今季のセリーグ、最終的な順位がどうなろうとも巨人は数年後に大きな転換期を迎える。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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