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NY金23日:米利上げ観測の織り込み続き続落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NY金23日:米利上げ観測の織り込み続き続落

COMEX金12月限 前日比9.50ドル安

始値 1,075.00ドル

高値 1,076.50ドル

安値 1,065.00ドル

終値 1,066.80ドル

特段の新規材料は見当たらなかったが、引き続き米利上げに対する警戒感が強く、続落した。

週明けのアジア時間の開始直後から売り圧力が強まり、一気に1,060ドル台に突入した。その後もドル高傾向に上値を圧迫され、一時は1,065.00ドルまで下落するなど、地合の悪さが再確認されている。年初来安値1,062.00ドルを下抜くまでの勢いは見られなかったが、引け値としては今年最安値が更新されている。

11月マークイット製造業PMIは前月の54.1から52.6まで低下し、引き続き米製造業セクターに対する逆風の強さが確認されている。ただ、製造業部門に関してはドル高や海外経済の減速で特に事前の期待感が強くなかったこともあり、マーケットの反応は限定的。明日は7~9月期の米国内総生産(GDP)の改定値発表が控えており、ここで改めて米金融政策正常化プロセスに対する信認を高めていくことができるのかが問われることになる。速報値では前期比年率+1.5%になっていたが、改定値では+2.1%までの上方修正が予測されている。予想通りに強めの数値になれば、ドルにポジティブ、金にネガティブとなり、金相場は年初来安値更新を打診しよう。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、過度に積極的な利上げを行えば成長を損なうとして、利上げ後の引き締めペースは緩やかなものになるとの見通しを確認している。ただ、雇用増とインフレ加速継続なら利上げを正当化するとも発言しており、この発言を手掛かりに金相場を買い戻すような動きは鈍かった。徐々に来年の利上げペースを巡る議論が活発化しているが、現時点では当初は2会合で1回の利上げで、最終的に年1.00%程度の利上げ幅を想定している向きが多い。今後はこうした着実な金利上昇軌道を金価格に反映させていくことができるのかが問われることになる。

10月下旬から急落傾向が続いているためにリバウンドリスクには注意が必要だが、1,050ドル、1,000ドルと下値切り下げを打診する展開は維持される見通し。特にアジア時間に現物市場主導で反発するような動きもみられず、投機売り主導で下値を切り下げ易い地合が維持されている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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