債券市場でのパニックへの備え
ここにきて自宅で仕事に使っているパソコンの調子が悪くなってきた。26日には立ち上げた途端に異音を発した。それまでもなかなか立ち上がらなかったり、途中でフリーズして再起動を行うなどしてきたが、この異音発生でハードディスクがおかしくなりつつあると見て、買い換えを決心した。現在、使っているパソコンのOSはXPではないが、そのあとのVISTAであり、もうかなりの年数、使っていることも確かであった。
昨年はXPのサポートが終了することで、パソコンの買い換え需要が発生した。XPの安定さにより、企業の多くが使っていたようだが、これをみてもパソコンそのものの寿命は意外に長いようである。我が家のパソコンももう少し持つかと思ったが、とりあえず新型を購入して、いままでのVISTAはパックアップ用にすることとした。
毎日の仕事で何年も使っていると、いざパソコンが壊れたときには慌ててしまう。このときのために実はウインドウズ8.1のタブレットを購入してあったが、いつでも代替できるようなに体制にはしてなかったことに気づかされた。今回、いつでも置き換えられるように準備を整えた。
パソコンやインターネットもすでに水道、ガス、電気のようにインフラと化しており、止まってからその普通に動いているありがたみに気が付く。これは金融市場そのものにも言える。
扱っている金融商品の売買が円滑にでき、その決済に向けての社内のシステムが働き、さらにその決済を円滑にできる場が形成されている。しかもそれは国内ばかりでなく、海外とのやり取りも可能にさせるようなシステムができあがっている。
これらのシステムの一部に何かしらの支障が発生してしまうと、取引が円滑にいかなくなり、金融市場に大きな影響を与えることになる。日本の金融のシステムには個々の金融機関のシステム、さらに取引所などのシステムに加え、その中心に日銀のシステムが存在している。日銀の業務における金融政策の決定などはほんの一部の業務にすぎず、この巨大な金融インフラを支えている部分が非常に大きなものとなっているのは当然と言えば、当然であろう。
金融では決済システムが円滑に機能するかどうかが大きな問題となるが、市場そのものでは円滑な売買が可能かどうかが問題となる。ただし、これにはハード的な要素よりも、ソフトというか市場参加者のマインドそのものが大きな影響を与えることになる。もちろん株式市場や債券先物などは取引所の売買システムが円滑に機能することが重要であるが、それとともに取引している参加者の思惑が重要な要素となる。
債券の現物債の取引は相対となっており、ここでは電話やネットでのやり取りが主体となっている。そのときの値付けは、相場の地合、先物やBBでの現物の動き、他市場の動向、そして投資家の需要等で判断される。つまり個人の判断が相場を決めている。ここに何かしらの事態が発生したらどうなるであろうか。
この場合の事態とは、相場に関わる何かしらの思惑が発生することを意味する。ひとつの例でいえば、リーマン・ショック後の物価連動国債や15年変動利付国債の急落である。流動性が薄いところ、買い手の中心となっていた海外投資家からの投げ売りにその引き取り手がいなくなり、需給バランスが一気に崩れたのである。これはたまたま発生したと言えるのか。
大量に発行された国債は円滑に消化されている。そこに日銀が大量に買い込むことで、流動性そのものは後退したが、需給面での不安は後退し、長期金利は低位安定している。この均衡は絶対に崩れないものと言えるのであろうか。何かしらの出来事をきっかけに、現物債を売買している担当者が不安を覚えたとき、マーケットは様変わりする可能性がある。金利が上がれば買い手は待っているというが、金利が上がった要因次第では、押し目買いのつもりが、それも損失を被り、損失が急激に膨らみ、パニックに陥ることも十分に想定される。それがいつ起きるかは予測も難しいが、そのための事前準備も必要であろう。むろん、それはヘッジをするとかではない。市場がパニックとなっても、少しでも冷静でいられるような心構えの部分が大きいのではなかろうか。