FRBがゼロ金利解除まで1年も待つのか
10月28日、29日に開催されたFOMC後の声明において、米国債とMBSの新規の買入れを停止することを明らかにした。ただし、今後償還が来たものは再投資し、膨れ上がったバランスシートは当面維持することも明らかにした。
FRBは予定通りにテーパリングを終了させた。10月初めから中旬にかけて米国株式市場が急落しドルも下落するなどやや市場は波乱含みとなったが、ここにきて市場も落ち着きを取り戻していた。
声明文になかで、事実上のゼロ金利政策に関しての「相当な期間」維持する方針について、変更は加えられていなかった。とりあえずテーパリングを終了させることが今回は主目的であり、ゼロ金利解除に向けてのステップは徐々に行ってくることが予想される。市場に動揺をもたらす可能性もあるこの「相当な期間」の表現修正については、相当気を使ってきているように思われる。ただし、市場が次第に利上げを意識するようになった際に、この表記が変更されることが予想される。
声明文の表記の上でもいくつかの修正が加えられており、このあたりからもFRBの次のステップに向けての動きがある程度読めてくる。
特にイエレン議長の専門分野でもある労働市場について、「労働市場の状態はやや改善が進み、雇用数はしっかりと増え続け、失業率は下がってきている。全体的にみると、幅広い労働市場関連の指標は、労働資源の未活用が次第に改善していることを示している。」(日経新聞電子版より)として、労働市場の改善見通しが今回の資産購入プログラムの終了の大きな要因となったことを示していた。
また、物価に関しては「エネルギー価格の低下やその他の要因から短期的には物価上昇は抑えられる可能性が高いが、FOMCは物価上昇率が目標である2%を下回る水準が続く可能性は今年はじめに比べるとやや薄らいできたとみている」(日経新聞電子版より)として、物価の低迷については今回のステップの阻害要因にはならなかったことを示した。
今回の決定については、ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁が反対票を投じた。コチャラコタ総裁は、インフレ見通しが2%に戻るまで資産購入プログラムを現在の水準で続けるべきだと主張していた。
FRBのテーパリングの終了を受けた米国市場での動揺は限定的となり、株式市場も一時下げ幅を拡大する場面もあったが、29日のダウ平均は31ドル安に止まった。米国債の下落も限定的となり、10年債利回りは2.32%と落ち着いている。外為市場ではドルが全面高の様相を呈し、ドル円は109円近辺に上昇したが、これはある程度、今後のゼロ金利解除に向けた動きを意識したものと思える。
いまのところFRBの正常化にむけたロードマップ通りに進んでいるように思われる。FOMC後の声明文についても、これでいったん終了というよりも、今後の展開に期待を残すような内容になっている。これからみても、次のステップであるゼロ金利解除については、それほど長い相当な期間を置くことは考えづらい。
今後のFRBは、何かしらのテールリスクでも出てこない限りは、来年の4~6月あたりを目途にゼロ金利を解除する準備を進めてくることが予想される。日銀も2006年の量的緩和解除後はすぐにゼロ金利解除に向けた準備を進めていた。資産購入プログラムの終了は決してひとつの区切りではなく、途中のステップに過ぎないことを市場はもう少し認識すべきではなかろうか。あと1年もFRBが待つことのほうがむしろ想像しがたいと思う。