異次元緩和第二弾決定の背景
10月31日の金融政策決定会合の議事要旨をあらたて確認してみたい。まず、このときの追加緩和の要因となったものの記述を点検してみる。
「物価面について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、このところ物価の下押し要因として働いていると指摘した。」(10月31日の日銀金融政策決定会合より、以下「」の部分は同じところから引用)
消費増税引き上げにより、予想以上に需要が低迷し、今年6月あたりからの急激な原油価格の下落の影響で、予想以上に物価に下押し要因が働いているとしている。
「何人かの委員は、こうした物価面での下押し圧力が、予想物価上昇率に与えるマイナスの影響について懸念を表明した。」
この何人かの委員は、QQE2を主導したメンバーと思われ、総裁や副総裁である可能性が高い。
「(多くの委員は)短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクが大きいと述べた。」
多くの委員と言うが議長を除けば4人となる。ところで、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換、とは何をもって言えるものなのであろうか。これまではゼロ%近傍にあったコアCPIが1.5%に上昇したことが確たる証拠との見方があるかもしれない。しかし、コアCPIは2008年に一時2.0%を超えたことがある。この際の物価上昇要因は原油高にあった。今回もCPIの上昇は円安の影響もあり、原油価格の上昇などにそのかなりの部分が説明可能ではなかったか。だからこそ原油価格の下落で、簡単にCPIも下落してしまったと言える。
「これらの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで追加的な金融緩和を行うべきであると述べた。」
ここで追加緩和が示された。コアCPIの低下要因が原油価格の下落としているのに、期待でCPIを持ち上げようとしている根拠はどこにあるのか。スターウォーズのフォースは日銀内部では存在しているようである。このタイミング、という表現には、何かしら良いチャンスであったような言い方であり、その裏にはFRBとGPIFがあったということであろうか。ただし、理由づけとしては下記の発言が続いていた。
「(一人の委員は)年末から来年にかけて、企業が事業計画を策定したり、賃金交渉を行う重要な時期であることを踏まえると、特に重要であると付け加えた。」
ここれはもちろん公式な説明としてもっともらしいが、サプライズで円安と株高を狙ったことは明白ではなかろうか。
「何人かの委員は、わが国では、長年にわたってデフレが続いたため、予想物価上昇率の形成は、実際の物価上昇率の動きに大きな影響を受ける傾向があり、ここで物価上昇の足踏みが長引けば、影響が懸念されると述べた。」
そうであるのなら、何も大量に国債などを買わず、原油でも大量に買い込んで、値を釣り上げた方がより効果的ではなかろうか。
「一人の委員は、日本銀行は、これまで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針を繰り返し述べており、ここで政策対応を行わなければ、そうしたコミットメントを反故にするものであると理解され、日本銀行に対する信認が大きく損なわれる可能性もあると述べた。」
「この間、別の一人の委員は、今回、追加的な金融緩和を実施することによって、2015年度下期には、2%の「物価安定の目標」の安定的な達成が十分視野に入ると考えられ、そうであれば、その時期には、出口戦略の議論が開始できる状況になる可能性もあると述べた。」
さて、この発言、どちらかは黒田総裁と思われる。前者が中曽副総裁で後者が黒田総裁か。追加緩和の理由づけであるが、特にこのタイミングで日銀がサプライズ緩和をしなくても信認は損なわれることはなかったと思う。むしろ、再度異次元緩和をしたのに、やはり物価は上がらなかったというほうが、リフレ政策そのものが間違いであったという証拠になるのではなかろうか。
「具体的な追加緩和の内容について、何人かの委員は、今回の措置が人々のマインドに働きかけるものであることを踏まえると、戦力の逐次投入と受け取られないよう、リスク量や副作用も勘案のうえ、可能な限り大きな規模を目指すべきであると述べた。」
QQE2実現化チームは、戦力の逐次投入ではないことを明確にするため、国債買入れの技術的な拡大のようには見せず、まさにバズーカの第二弾であることを強調するため、大きな規模を目指した。この背景にはサプライズを狙い、円安株高に拍車をかけることも期待してのものであったといえる。
そのあとに追加的な金融緩和を行うことに慎重な見方を示した委員の発言があったが、これについては後日あらためて確認してみたい。