これで良いのか日銀審議委員人事
日銀法第23三条には、「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する」とあり、その二項に「審議委員は、経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する」とある。
日銀の役員でもあるところの日銀総裁と副総裁(執行部)と審議委員は、両議院の同意を得て、内閣が任命するが、その前に候補者を政府が提示する。政府はある程度絞り込まれた候補者のなかから選出するが、その絞り込みは誰がやっているのか。
これまでの日銀の審議委員の候補は、2月6日の日経新聞朝刊の記事にもあったように、日銀が財務省と擦り合わせしながら官邸に人選をあげていくパターンとなっていた。ところが、今回の宮尾審議委員の後任人事については、そういった過去のプロセスを経ていなかったようである。日経新聞では「今回は一貫して官邸主導だった」とある。
昨年10月の異次元緩和第二弾では政策委員の票が割れ、かろうじて5対4で追加緩和を決定した経緯がある。今回任期を迎える宮尾氏は賛成、森本氏は反対に回った。反対した4人は実業界出身者で、執行部(総裁と2人の副総裁)以外で賛成に回ったのは2人の「学者」出身者であった。
内閣官房参与の浜田宏一氏は、3月と6月に相次いで任期を迎える2人の日本銀行審議委員の後任人事について、産業界や金融界などから選ぶべきではないとの見方を示していた。つまりこれは現在の日銀の政策を理解するリフレ派の学者から選出すべきということになる。現実にリフレ派の原田氏が今回、政府は起用した。
日銀の審議委員は日銀総裁と同じ考え方を持つ人ばかり選出すれば、合議制を取っている意味がないが、今回の人事はリフレ派による多数派工作の一環ともいえる。
レジームチェンジが道半ばで現在のリフレ政策をより強力に押し進める必要がある、との建前であるのかもしれないが、リフレ政策でレジームチェンジは起きず、原油価格の下落などで物価の上昇率は目標達成どころか、目標から遠くなりつつある。間違った政策をとってしまったが、あとには引けず後遺症のリスクがあるにも関わらず劇薬投与を続けるための工作と見えなくもない。
3月25日に任期を迎える日銀の宮尾審議委員の後任に原田泰氏を起用したあと、6月30日に任期を迎える森本審議委員の後任は、やはりリフレ派の若田部昌澄早大教授あたりの声も上がっている。
お友達の多数派が牛耳って間違った政策を推し進める。これが民間企業であればどのような結末を迎えるのかは明らかである。それが日本の金融経済に大きな影響を与える日銀の役員でもある審議委員人事で同様の事態が発生するとなれば、何が将来待っているのか、あまり想像したくはない。