1月に都銀は中期債主体に大量の売り越し
日本証券業協会は2月20日に1月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先(条件付売買)を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっている。このため、短期債を除く債券のデータについては、全体から短期債を引いたものを使う。
1月の最大の売り越しは噂されていたように都銀であった。トータルで1兆3173億円の売り越しとなっていた。同時に公表された国債の投資家別売買高によると、都銀は中期債を9855億円、長期債を1056億円、超長期債を1779億円の売り越しとなっていた。ほかの投資家はこれほど大きな売り越しをしていたところはなく、1月20日を起点としての債券相場の調整局面には、この都銀というかメガバンクの動向が大きく影響していたと思われる。
今年に入り、ECBの量的緩和観測による欧米の長期金利の低下なども手伝って、日本の債券の利回りも低下してきた。昨年末にかけて2年債利回りあたりまでマイナスとなっていたが、1月20日には5年債カレント物の利回りもマイナスとなった。さらにこの日に10年債は一時0.195%と過去最低を更新し、ここが現在までの過去最低利回りとなっている。
この2015年1月20日に5年国債入札があったが最低落札、平均落札利回りともに0.000%となった。そして1月22日にはECBが念願の量的緩和を決定する。この22日の日本での20年国債入札は入札結果はそれほど悪くなかったものの、この結果発表後に相場は急落し、地合が急変したのである。
1月末にかけて20年債利回りは1.0%台を回復したが、それとともに中期債利回りのマイナスが解消され、5年債利回りは1月末に0.060%に上昇していた。
業者のリスク許容度の低下は2月3日の10年国債入札で明らかになるのだが、それまでの間に相場の調整は進む。日銀の買入に向けて相場を仕掛けて上昇させ、利ざやを稼ぐという手法が取れなくなった。相場下落により短期間とはいえ保有国債の価格変動リスクが意識され、それが2月3日の10年国債入札の結果に現れた。
あらためて1月の投資家動向を確認しておくと、売り越しは信託銀行の2141億円の売り越しとその他金融機関の1741億円の売り越しが目立つ程度。信託銀行は年金絡みの売りとともに、長期債から超長期債への乗り換えもあったようである。
買い越しとしては地銀が9563億円の買い越し、主に長期債主体の買い越しとなっていた。農林系金融機関が5679億円の買い越し、こちらは超長期債主体の買い越し。生損保が3602億円の買い越し、こちらも超長期債主体の買い越し。外国人が3152億円の買い越し、こちらは長期債主体。信金が2881億円の買い越し、こちは超長期債主体。さらに投資信託は2217億円とこちらは中期債主体の買い越し。投資信託は日銀に当座預金を持っておらず、短期資金の置き場としては中短期債の購入にある程度頼らざるを得ない面もある。