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日銀はすでに国債全体の四分の一を保有

久保田博幸金融アナリスト

3月18日に日銀は2014年10~12月期の資金循環統計を発表した。これによると家計の金融資産は1694兆3189億円となり、過去最高を更新した。

資金循環統計を基に、2014年12月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

12月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、885兆2014億円(9月末860兆6779億円)と前回の9月末から24兆5235億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると昨年末の国債の残高は約1023兆円となる。

参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。以下、投資家別に残高の多いものから並べてみた

銀行など民間預金取扱機関 272兆0506億円(9月末282兆1407億円)、30.7%(同32.8%)

民間の保険・年金 234兆6877億円(同230兆4700億円)、26.5%(同26.8%)

日本銀行 207兆1462億円(同183兆4282億円)、23.4%(同21.3%)

公的年金 57兆2098億円(同62兆0554億円)、6.5%(同7.2%)

海外 45兆3604億円(同41兆0746億円)、5.1%(同4.8%)

投信など金融仲介機関 36兆6159億円(同28兆0745億円)、4.1%(同3.3%)

家計 18兆4400億円(同19兆3203億円)、2.1%(同2.2%)

財政融資資金 2291億円(同2882億円)、0.0%(同0.0%)

その他 13兆4617億円(同13兆8260億円)、1.5%(同1.6%)

9月末に比べて、残高が最も増加していたのが今回もまた日銀である。9月末比で23兆7180億円の増加となっている。つまり9月末から12月末にかけての全体の増加分24兆5235億円のほとんどを日銀がカバーしていた計算となる。次に増加額が大きかったのは投信など金融仲介機関で8兆5414億円増、次いで海外で4兆2858億円増、次いで民間の保険・年金の4兆2177億円増と続く。

反対に9月末から12月末にかけて残高を大きく落としていたのは、銀行など民間預金取扱機関で10兆0901億円減、次いで公的年金の4兆8456億円減。銀行の残高減少は内訳をみると中小企業金融機関等が4兆9060億円も減少させており、引き続きゆうちょ銀行が国債残高を大きく減少させていた可能性がある。公的年金はGPIFの運用見直しによる影響が続いている。

海外投資家の長期国債のシェアは5.1%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.3%のシェアとなり9月末の8.9%から増加した。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは25.0%となっており、国債全体の四分の一を保有していることになる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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