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欧州の金利低下の背景と今後

久保田博幸金融アナリスト

ドイツの10年債利回りは、昨年1月初めの1.9%台から右肩下がりとなり、今年の4月16日には0.1%を割り込んできた。この日は9年債利回りが初のマイナスとなった。4月17日にドイツの10年債利回りは0.049%まで低下し、これがいまのところ過去最低利回りとなっている。

また、20日にベルギーが実施した5年債入札で利回りがマイナスとなったが、ユーロ圏ではフィンランド、ドイツ、オーストリア、オランダ、フランスに次いで6か国目となったようである。

このようなユーロ圏の国債の異常とも言える利回り低下背景には、ECBによる量的緩和による国債買入がある。それとともにギリシャの債務問題によるリスク回避の動きも影響していた。

ギリシャの債務問題は予断を許さないものの、少なくともユーロ離脱という事態は避けようと動いているように思われ、ぎりぎりの交渉が続けられている。22日のECBの政策委員会による電話会議では、ギリシャの銀行向け緊急流動性支援の上限を約15億ユーロ引き上げ755億ユーロとすることを決めたようである。24日にはラトビアでユーロ圏の財務相会合が開かれ、ギリシャの資金が底を突く前に救済融資を受けるための経済改革をギリシャが約束するよう説得を図るとされている。

ギリシャの動向も気になるものの、ユーロ圏の中核国の長期金利の低下はそろそろボトムアウトしてくるのではないかと思われる。ドイツの10年債利回りは17日に0.05%割れとなったあと戻しており、22日には0.16%となっている。短期的な調整の可能性はあるが、ここにきて米国の10年債利回りもレンジの上限2.0%に接近し、英国の10年債利回りも1.7%台に上昇している。

イングランド銀行が22日に公表した4月8、9日開催分の金融政策委員会(MPC)議事要旨によると、インフレが予想以上のペースで加速するリスクが意識されていたようで、イングランド銀行の利上げが再び意識され始めた。ただし、この日の会合では9人の委員全員一致で金融政策の現状維持を決めていた。

日本では22日に2年債利回りが3か月ぶりにマイナスとなったが、この背景にあるのが、日銀による国債買入と欧州での金利低下である。需給がタイトとなるなか、海外勢などによる需要でマイナスをつけたとみられるが、欧州の利回り低下が止まるとこの構図にも変化が生じる可能性がある。日米欧の長期金利の地合に変化が出てくるのかも注意したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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