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日銀の国債保有額は全体の四分の一超に

久保田博幸金融アナリスト

6月29日に日銀は2015年1~3月期の資金循環統計を発表した。これによると家計の金融資産は1707兆5130億円と初めて1700兆円の大台に乗せた。円安・株高による保有株式や投資信託の価格上昇に加え、投信への新規資金の流入なども影響した。

資金循環統計を基に2015年3月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。

3月末の国債(国債・財融債のみ、国庫短期証券を除く)の残高は、883兆1302億円(昨年12月末882兆6662億円)と前回の12月末(確報値)から4640億円増加した。国庫短期証券を加えると3月末の国債の残高は約1038兆円となる。日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている点に注意いただきたい(財務省の国債残高などは額面ベースが多い)。

銀行など民間預金取扱機関 269兆9118億円(12月末273兆7281億円)、30.6%(同31.0%)

民間の保険・年金 232兆1373億円(同234兆8697億円)、26.3%(同26.6%)

日本銀行 224兆9483億円(同207兆1462億円)、25.5%(同23.5%)

公的年金 56兆3059億円(同56兆8725億円)、6.4%(同6.4%)

海外 43兆2369億円(同41兆9572億円)、4.9%(同4.8%)

投信など金融仲介機関 26兆1977億円(同36兆3713億円)、3.0%(同4.1%)

家計 16兆8855億円(同18兆4400億円)、1.9%(同2.1%)

財政融資資金 566億円(同2291億円)、0.0%(同0.0%)

その他 13兆4502億円(同13兆0521億円)、1.5%(同1.5%)

12月末に比べて、残高が最も増加していたのが引き続き日銀である。12月末(確報値)比で17兆8021億円の増加となっている。全体の残高はほぼ変わらなかったことで、日銀の増加分がとこかで減少したことになる。

上記の区分でみると減少額が大きいのは「投信など金融仲介機関」の10兆1736億円の減少となっているが、内訳をみるとディーラー・ブローカーが10兆1305億円減少させており(残高は12月末の約30兆円から3月末は約20兆円に)、日銀の国債買入に対応して業者自体が残高を落としていたことが伺える。

銀行など民間預金取扱機関は3兆8163億円の減少となっていたが、その内訳は農林系金融機関が1兆7776億円の増加となっていたものの、中小企業金融機関等が5兆9344億円の減少となっていた。今回もゆうちょ銀行の減少分が大きかったのではなかろうか。

公的年金は5666億円の減少となったが、減少額は少なくなっている。GPIFの運用見直しによる売却はある程度一巡したとみられる。

海外投資家は1兆2797億円の増加となっていた。3月末から6月末にかけての海外投資家の動きも気になるところである。4月末あたりから6月にかけてドイツの長期金利が大きく上昇しており、日本国債にも影響が出ていた。

海外投資家の長期国債のシェアは4.9%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると全体の9.4%のシェアとなり12月末の9.3%から増加した。日銀は国庫短期証券を含んだシェアは26.5%となっており、国債全体の四分の一以上を保有していることになる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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