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日本の米国債保有額が減少

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

米財務省が発表している米国債国別保有残高(MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES、http://www.ustreas.gov/tic/mfh.txt)を確認してみたところ、今年2月に一時的にトップに返り咲いた日本は3月以降は再び2位に後退しており、ここにきて残高そのものも減らしていていた。

2015年6月の上位10か国は次の通り(単位、10億ドル)

1.中国(China, Mainland) 1271.2

2.日本(Japan) 1197.1

3.カリブ海の金融センター(Carib Bnkng Ctrs) 318.5

4.石油輸出国(Oil Exporters) 296.7

5.ブラジル(Brazil) 256.3

6.アイルランド(Ireland) 217.7

7.スイス(Switzerland) 217.7

8.英国(United Kingdom) 214.7

9.ベルギー(Belgium) 207.7

10.ルクセンブルグ(Luxembourg) 184.0

日本が1兆2000億ドルを割り込んだのは2013年以来初めてとなるようである(ブルームバーグ)。米長期金利は4月の1%台から5月には2%台での推移となり、6月には一時2.5%近くに上昇していた。日本勢はいったんここでポジション調整をしてきたものとみられる。GPIFを中心とした年金運用などの運用見直しによる米国債の購入が一段落したことも要因として考えられる。ただし、中国を含めて全体の残高が増えているなか、日本の残高の減少が目立った格好となった。

FRBは早ければ9月のFOMCで利上げを実施してくる可能性があるが、米長期金利そのものは比較的落ち着いている。3%あたりまでの上昇もあるかとみていたが、いまのところそのような動きにもなっていない。原油安などによる世界的なディスインフレ傾向も米長期金利を押さえつけている要因のひとつとなっている。

仮にFRBの利上げが実施されても、各国の米国債の保有残高にはそれほど影響は出ないのではないかと思われる。むしろ、多少なり利回りが付いたほうが、保有国債の評価損を招くものの、長い目でみれば投資妙味を増す可能性があるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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