原油安はFRBの利上げを妨げる要因になるのか
19日に公表された7月28~29日開催のFOMC議事要旨によると、多くの委員が雇用の改善を理由に利上げの時期が近づいていると判断していた。また、物価が上昇するという合理的な確信が得られれば、利上げに動く意向を示していた。 19日に発表された7月の米国の消費者物価指数は前月比0.1%の上昇となった。6か月連続のプラスで、前年同月比では0.2%の上昇となった。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.1%上昇し、前年同月比では1.8%上昇となった。FRBの物価目標は消費者物価指数ではないものの、食品とエネルギーを除いたコア指数は2.0%近くにあり、物価の水準そのものは利上げに向けての妨げにはならないと思われる。
ただし、ここにきて原油価格が再び下落していることは気になる。19日の原油先物は先週の米原油在庫が予想に反して増加していたことが嫌気され、WTIの9月限は大きく下落し40ドル台に下落した。しかし、この原油価格そのものの下落より、FRBが気にしているのはその背景のひとつともなっている中国経済の減速傾向であると思われる。ただし、それが自国、つまり米国経済に直接悪影響を与え、デュアルマンデートのひとつ雇用に大きな影響が出ない限りは、こちらもそれほど大きな利上げの障害とはならないのではないかと思われる。
いずれにしても米国の雇用が改善していることは確かであり、この雇用の回復を背景に物価の上昇率もいずれ前年比2%の目標に近づくとのシナリオをFRBは描いている。つまりWTIがたとえ40ドルを割り込んだとしても、それがFRBの利上げを阻止するなり、遅らせる要因になることは現状考えづらい。
ただし、FRBとしても利上げによる過度な相場変動は引き起こしたくはないとみられ、テーパリング開始決定時のことも踏まえ、市場と対話をしながら腰を据えて利上げのタイミングを計ってくると予想している。今回のFOMC議事要旨でも、参加者の大半が「利上げの条件をまだ満たしていないが、その時期が近づいている」と指摘しながらも、個人消費や設備投資などの勢いに不安が残ると指摘もあり、利上げに慎重な参加者の声も反映されている。市場ではこれを受けて9月の利上げの可能性が後退したと読んだようだが、やはり利上げは9月よりは12月の可能性が高いのではないかとみている。