ダドリー総裁発言は軌道修正なのか
8月26日の米国株式市場でダウ平均は619ドルもの反発となった。この上げ幅は6年10か月ぶりで、過去3番目の大きさになるそうである。この反発のきっかけは、前日の上海株や東京株式市場の上昇、中国が利下げに続いて大量の資金供給を行ったこと、さらには7月の米耐久財受注額が市場予想を上回ったことなどが要因とされた。しかし、引けにかけての戻りは、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言をきっかけとした買い戻しが大きく影響したとみられる。
今回の世界的な株安連鎖のきっかけは中国にあったかもしれないが、それよりFRBやイングランド銀行などが出口に向かい始めたことが大きな要因とみている。すでにFRBはテーパリングを終了させた。次は出口政策、つまり利上げとなることで、市場も過剰流動性相場が永久に続くわけではないことを意識しはじめたとみられる。FRBの今後のスタンスに対して市場がより敏感になってきたといえるのではなかろうか。
FRBも今回の米国株を含めた世界的な株価の調整には注意を払っていたはずであり、直接的な手段は打たずとも、市場の動揺を抑えるための口先介入、市場との対話を図る必要があった。ちょうど8月27日から29日にかけて、市場参加者が注目しているカンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)が開催されるため、ここでFRB関係者から何かしら市場を沈静化させるべきコメントが出てくると予想されていた。
ところが、27日までは待っていられなかったようで、FRBの重鎮のひとりであるニューヨーク連銀のダドリー総裁が26日の質疑応答で、「現時点での私の考えでは、9月のFOMCで正常化のプロセス開始を決定する論拠は数週間前に比べやや弱くなっているようだ」と語ったのである。
ここにきての相場変動で大きな懸念材料ともなっていた9月のFRBの利上げ観測に対し、その可能性がさほど高くはないことを示唆し、目先の不安材料を取り除こうとしたとみられる。この背景には政府からの意向もあった可能性があるが、それを察しての発言ともみられる。
イエレン議長はどのタイミングで正常化、つまり利上げに踏み切ると予定していたのかは推測の域は出ないが、あくまで年内との示唆だけであり、9月の利上げの可能性をこのタイミングで消し去ったとしてもあまり問題ではない。このダドリー総裁の発言で年内利上げの可能性そのものが後退したわけではない。
2013年5月のバーナンキ・ショックのような動きが今回株式市場で出たともいえる。あのときに12月のテーパリング開始は市場の同様を与えずに成功したこともあり、今回もその成功体験を生かすつもりではなかろうか。
このあたり、8月27日から29日にかけてのジャクソンホールでのフィッシャーFRB副議長などの発言から探ってみたい。念のためイエレン議長は、2013年のジャクソンホールにバーナンキ議長が欠席したと同様に、今回は異例の欠席となっている。