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25年ぶりの税収増と来年度国債発行計画

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

12月16日の日経新聞電子版によると、2016年度の政府予算案の骨格が明らかになり、税収は2015年度当初予算を3兆円程度上回る57兆円台半ばと25年ぶりの高水準になるそうである。バブル期の1990年度に60.1兆円と過去最高を記録していたが、2016年度は法人税や所得税が増え、消費税率8%への引き上げで消費税収が増えたこともあり、バブル期に次いで史上三番目となる。

来年度の新規国債の発行額は34兆円台と2015年度当初予算に比べて2兆円以上の減額となる。これは実績ベースで8年ぶりの低水準。歳出をどれぐらい借金で穴埋めしているかを表す国債依存度は約36%と前年度に比べて2ポイント低下となる(以上、日経新聞の記事より引用)。

アベノミクスは第一の矢があらぬ方向に向かってしまい、物価面では結果を出してないにも関わらず、企業収益は改善し税収は伸びている。これは円安や世界的な危機の後退による不安感の払拭とともに世界的な景気の改善なども影響していると思われる。

ただし、歳出総額は前年度の96.3兆円を上回り、このうち社会保障費は32兆円規模となり過去最高を更新する。国債依存度は低下するものの、歳出総額の伸びによりその低下幅はそれほど大きくはならない。

新規国債の発行額は34兆円台となると今年度の36.9兆円から2兆円程度の減額となる。借換債も来年度の概算要求ベースは112.8兆円と、今年度の計画額の116.3兆円より約3.5兆円減となる。

12月14日に財務省で開かれた国債市場特別参加者会合の議事要旨によると、カレンダーベース市中発行額の減額幅は、国債発行総額の減額幅より抑えてほしいとの意見がみられた。

来年度の国債発行総額は今年度よりも5兆円程度減額されるが、カレンダーベースの発行額は国債の前倒し発行などで調整ができる。来年度2年債や5年債、20年債は減額の余地ありとの見方が多いものの、日銀が大量に国債を買い入れて現状から流動性への危惧があり、大きな減額は避けてほしいとの意見も出ている。

10年債に関してはいずれ先物のチーペーストとなることで、できれば現状維持が望ましいとの意見が出ていた。さらに借換債は一時減額されても、2018年度以降は再び増えるため、減額してから増額するよりも余裕のあるうちに地均し的なものも必要との意見も出されていた。

前倒し発行額が予想以上に積み上がっていることも確かであり、カレンダーベースでも発行額を抑えて財政健全化に向けた姿勢を示すこともたしかに重要ではある。しかし、日銀が異次元の国債買入をしている以上は、いずれ将来の出口を見据えた上で、次元を変えての国債発行計画も必要ではないかと思う。

これについては財務省から、平成28年度における前倒債の発行額についても、カレンダーベース市中発行額の減額をできるだけ抑制するという考え方と翌年度以降における大量償還への対応という本制度の趣旨を踏まえながら検討するとの見方が示されていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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