日本のマイナス金利の源泉
ユーロ圏におけるマイナス金利については、ドイツ国債などは安全資産として買い進まれた面もあるが、ECBの政策金利の下限であるところの預金ファシリティ金利がマイナスになっていることが大きな要因となっている。
ユーロ圏で民間金融機関が資金の置き場として、ECBの翌日物預金となる預金ファシリティを利用している。ユーロ圏の金融機関にとって、所用準備額を超える資金については、付利がない超過準備として中央銀行の当座預金に預けておくより、利子が付く預金ファシリティを利用することになる。ところがこの預金ファシリティの金利がマイナスとなってしまったことで、資金が少しでも利子のつく長めの期間の国債や他の金融商品に向かうことになる。
日銀は当座預金の超過準備にかかる利子についてはプラス0.1%に据え置いている。これは金融機関の資金を当座預金に寝かしてもらえないと、マネタリーベースの目標が達成できないためである。日銀がECBのようなマイナス金利政策を取ってないのはこのためである。さらに黒田総裁は中短期の円債の金利がマイナスになっていることに対し、そのように誘導しているわけではないと発言している。
ユーロ圏の国債はECBが預金ファシリティの金利までマイナス金利で国債を購入しており、このためマイナス金利が維持されている面もある。これに対して国内の中短期の国債の金利がマイナスとなっているのは、実勢金利であれば日銀がマイナスでも国債を買い入れていることも要因である。業者はマイナス金利でも国債を入札するといったことも可能となっている。しかし、日銀が政策としてマイナス金利を発生させているわけではない。
国内のマイナス金利の発生原因は、為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金で、マイナス金利の国債でも運用出来ている。つまり、ベーシススワップ取引によりつくプレミアム分が利子相当となり、ドルを円に買えてマイナス金利の国債を購入してもお釣りがくる勘定となる。このため、ある程度のマイナス金利でも収益はプラスとなる。これによりマイナスが発生している。
この背景には旺盛な「国内」機関投資家のドル需要がある。低金利の国内債券から海外の債券に運用の一部に切り替えるなどしており、その需要があってスワップ等を使って円をドルに換える際に、相手側にいる外銀はその円資金をマイナスでも運用できる。つまり、日本のマイナス金利の源泉にあるのは国内投資家であるといえる。