マイナス金利も市場の不安定要因に
日米欧の欧米市場では再びリスク回避の動きが強まった。9日の東京株式市場では日経平均は900円を超す下げとなり、ドル円は115円を割り込み、このリスク回避の動きも影響し、日本の長期金利はついに初めてマイナスとなった。
8日の米国株式市場では、石油・天然ガス開発大手のチェサピーク・エナジーが、債務再編へ向けて法律事務所を雇ったとのニュースで一時ダウ平均は400ドルを超す下げとなった。この日の原油先物市場ではWTIが再び30ドルを割り込んでいた。ただし、この原油安や原油関連株が下げを主導したというよりも、エネルギー関連企業の不良債権が増加するとの懸念などからの銀行株の下落の影響が大きかった。
8日の欧州の主要株価指数は全て下落し、特にギリシャの株式市場の下落が目立ったが、銀行の信用リスクの高まりも影響していた。自己資本の補強を目的に発行した債券への利払いに懸念が生じたドイツ銀行が大きく下落していた。
債券市場ではポルトガルの国債が急落していたが、ポルトガルが緊縮策を緩める可能性も影響していた。これらの動きの背景としては、ECBの金融緩和策の効果に対して疑念が生じつつあることも指摘されている。
ここにきての欧米市場のリスク回避の動きの背景をみると、これまでのような中国などの新興国経済の動向がきっかけとはなっていない。むろん中国の景気減速や米国企業の業績への懸念等も背景にはあったろうが、銀行株が大きく下落していたことが市場の不安を強めさせた可能性がある。欧州でもそうであるとともに東京株式市場も同様であった。
日銀のマイナス金利の導入により、銀行の利ざやが小さくなるとともに、すでに10年債利回りもゼロ%となっており、国債での運用もしづらくなる。これまでの日銀の当座預金の超過準備分にはプラス0.1%の金利が残るものの、それ以上の分についてはマイナスの金利が付与されることになる。預貯金金利を下げざるを得なくなるが、それにも限界はある。
日銀の狙いはポートフォリオ・リバランスと言うが、すでにマイナス金利を導入している欧州でも資金シフトはあまり起きてはいない。日本でもそう簡単に資金を預金などから貸し出し、もしくは株や外債にシフトすることは考えにくい。これは機関投資家だけでなく個人も同様であろう。ましてやその金融機関への懸念がリスク回避の動きを強めさせて、円高株安を招いていることで、なおさらリスク資産に資金をシフトすることを躊躇させることになる。
1月28、29日の金融政策決定会合における主な意見をみても、金融市場の不安定な動きがマイナス金利付き量的・質的緩和の導入の要因となっていた。しかし、そのマイナス金利そのものが、金融機関への不安感を強めることになり、株価下落とそれにともなう円高要因になるという皮肉な結果となっている。欧州でもECBの金融緩和策の効果に対して疑念が生じつつあるようで、結果として日銀やECBのマイナス金利政策が市場を不安定化させているひとつの要因となっている。