上海のG20での謎の非公式会合
3月7日にウォール・ストリート・ジャーナルは「日本への批判高まり、円安誘導の選択肢なくなる」との記事のなかで、G4という非公式会合の存在を指摘していた。
2月26、27日に上海で開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の際、日本の他にユーロ圏、米国および中国のいわゆるG4が財務相・中銀総裁レベルの非公式会合を持ったそうである。関係者によると、G4の財務相・中央銀行総裁会議は少なくともここ数年、G20や国際通貨基金(IMF)年次総会などの際に定期的に行われているそうである。
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の議長を務めるオランダのダイセルブルーム財務相はG20会期中に、日本が通貨戦争を引き起こす危険性が協議されたことを明らかにしたと報じられた。これについて麻生太郎副総理・財務相は4日の参院予算委員会で、ダイセルブルーム財務相の上海での発言は誤って引用されたものだと欧州委員会高官から伝えられたと報告した。しかし、欧州委員会報道官はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、オランダ財務相の発言は正確に報じられたものだと述べたそうである。
ダイセルブルーム議長の発言があったのかどうか、非公式会合も開催されたのかどうかは定かではない。オランダ財務相であるダイセルブルーム議長のお膝元のECBはこれまで通貨安を意識した金融緩和を行ってきた経緯もある。3月にはECBは追加緩和を決定している。もしかすると2015年1月のECBの量的緩和政策決定の際にドイツとともにオランダは反対しており、日本を持ち出しながらも実はドラギ総裁に釘を刺した可能性もあるのかもしれない。これもあくまで憶測ではあるが。
G4のうち利上げした米国以外は、G20直後に預金準備率を引き下げた中国を含めて、通貨安狙いの追加緩和策を講じているところでもあり、もし発言があったとすればダイセルブルーム議長の後ろには米国の意向が働いた可能性もありうるか。米政府は安倍政権が日銀の金融政策に頼り、円安で成長を促そうとすることに対して懸念を示しているとされている。このような米国サイドの批判もあってか、日本政府は2011年の冬以降、為替介入は実施していない。
もしG4という会合が存在しているのであれば、昔のプラザ合意ほどではないものの、非公式に行われながらそれなりの影響力を持っている可能性もある。IMFのSDRはドル、ユーロ、英ポンド、円、そして人民元で構成されており、そのうちの4つの通貨に絡んだ国々の会合であり、特に為替政策に関しての協議の場である可能性がある。ただし、ここになぜ英国の名前が入っていないのかは疑問である。
その英国の中央銀行であるイングランド銀行のカーニー総裁からは上海のG20において「金融緩和が世界レベルで効果を上げるためには、単にある国から他国に需要の乏しさを移し替えるだけの方法を当てにすべきではない」との発言もあった。さらに「世界的なゼロ金利の中、フリーランチ(タダ飯)などない」という警告も発している。