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国債先物の乱高下の背景とは

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

大阪取引所に上場されている長期国債先物(債券先物)は3月31日に5銭高の151円88銭で寄り付いたが、ここが高値となりその後も売りに押され、53銭安の151円30銭の安値引けとなった。50銭以上の下落はそれほど珍しいことではないが、ここにきて膠着相場が続いていただけにやや奇異に感じた。しかも先物主導であり、現物債の売りは後からついてきた格好となっていた。

要因としては新年度入りすることで、銀行などによる期初の売りへの警戒も出ていたと思われる。5日に10年国債の入札を控え、業者がヘッジ売りを入れてきたのではとの見方もあった。月末にも関わらず年金などの買いが限定的であったことも意識されたのかとの思惑も。

31日の夕方に日銀が「当面の長期国債買い入れの運営について」を発表するため、今後の日銀の国債買入の増減に向けた思惑的な動きも出ていた可能性もある。こちらはむしろ30年債の買い材料となり、イブニング・セッションでの債券先物は151円50銭と買い戻されていた。これは米債が買われていたことも影響したと思われる。

米債高などから4月1日の債券先物は買いが先行し、前日比19銭高の151円49銭で寄り付いた。朝方発表された日銀短観は大企業製造業DIがプラス6となり、12月調査のプラス12から6ポイントの悪化となった。これもあってか日経平均は大幅に下落したが、同時に債券先物も寄り付き後、昨日よりピッチの速い下落となった。債券先物は一時151円02銭まで急落した。

たしかに以前に比べれば債券先物も出来高は薄くなっており、板が薄いなか値段だけが大きく飛んだ可能性はある。しかし、31日の債券先物の出来高は3兆円近くあったことでそこそこまとまった売りが入っていたとも思われる。

銀行などは国債が利回りがマイナスにまで低下していたことで、膨大な含み益を抱えている。もちろん最大の国債保有者は日銀ではあるが、日銀が利益確定のため国債を売却することはない。しかし、民間金融機関は特にマイナス金利となっているゾーンについては利益確定売りを入れてくる可能性はある。保有国債を売却するとそれが日銀の当座預金に積み上がり、マイナス金利のペナルティーが科せられる可能性はあるものの、それでも利益幅はそんなものではないため、目先の売りは出てもおかしくはない。そのような売りを先取りするような格好で債券先物に売りが入った可能性がある。

いずれにしてもこのような思惑も出ておかしくないような動きに債券先物がなっている。手口がわからない以上は売り手は想像するほかはない。ただし、1日の債券先物は151円02銭が安値となり、その後買い戻され、151円66銭まで戻して、引けは18銭高の151円48銭となっていた。これは日銀の国債買入結果や、日経平均の下げなどをきっかけとした買い戻しではあるが、現物債は中長期債に益出し売りが入ったものの、売られたところでは押し目買いも待っていたことで先物が買い戻された格好となっていた。または、思惑的なショートのカバーが入った可能性もある。いずれにしても債券市場では先物主導で動意を見せつつあり、期初の売り観測も残っており注意する必要がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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