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日銀対メガバンクと審議委員人事

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

なかなか衝撃的な記事が「週刊現代」2016年4月16日号に掲載されていた。タイトルは「日銀が作った『5分で読めるマイナス金利』にメガバンク行員がブチ切れた! 「ケンカ売ってんのか」」となっていた。

この記事では、「(黒田総裁は)なにもわかっていない」という、日銀の黒田総裁がマイナス金利の導入を決定した直後の在阪記者との懇談会に出席したメガバンクのあるトップからの発言も掲載されていた。

全国銀行協会の佐藤康博・前会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は、2月18日の記者会見で、日銀が導入したマイナス金利政策について「経済の下振れを防ぎ、デフレからの脱却を確実にしていく日銀の強い決意を反映したもの」と評価した。銀行界として「個人や法人のポートフォリオ・リバランス(運用資産の見直し)を後押ししていく」と表明した(日経新聞)。

4月1日に全国銀行協会の会長に就任した国部毅氏(三井住友銀行頭取)は、日本経済新聞のインタビューで、日銀のマイナス金利政策について「全体的に金利が下がり、消費や投資を喚起する効果が時間とともに出てくる」と語った。銀行収益には「貸し出しの利ざや縮小や国債運用利回りの低下で短期的にはマイナス」としつつ、デフレを脱却できれば「中期的にはプラス」と述べていた(日経新聞)。

我々が目にしたものは上記のような内容のものが多かった。ひとまず日銀のマイナス金利政策については、メガバンクのトップは表面上は賛同しているかに思えた。しかし、マイナス金利が銀行経営を圧迫することはたしかであり、本音のところはどのように考えているのだろうかとの疑問もあった。

もし本当に週刊現代が報じたような発言がメガバンクのトップから発せられたとしたのであれば、つい本音の部分が出てしまったのかもしれない。週刊現代の記事のタイトルは週刊誌ということもあって、かなり過激なものながら、日銀の出した「5分で読めるマイナス金利」についても、金融関係者からの評判はあまり芳しくないことも確かである。日銀は銀行の銀行であるという立場上もあるかもしれないが、やや上から目線的な指摘とのコメントもみられた。

見えないところで、日銀と民間銀行を代表するメガバンクなどがマイナス金利を巡っての意見の相違等が生じているとなれば、日銀の審議委員人事にも影響を与えかねない。

石田審議委員の任期は6月29日までとなっており、後任の人選も進められていると思われる。ここで気になるのは石田委員までの前任者がすべてメガバンクからの出身者となっていた点にある。

新日銀法が施行されてからは、特に政策委員における産業枠や銀行枠など業界枠が明確になっているわけではない。しかし、果たしてメガバンク以外からの人選があるのであろうか。日銀は銀行の銀行であることで、当然ながら銀行との繋がりは強いはずである。

ただし、この人選は政権が握っていることも確かであり、慣習に縛られないかたちでの人選もありうるのかもしれない。また、もし上記のようにマイナス金利を巡っての日銀と銀行との間に意見の相違が出ているとなれば、それも影響する可能性はある。

白井さゆり委員の後任が桜井真氏となっていたことで、日銀の政策委員には女性が一人もいない状況となっている。そうなると、もしや銀行枠にとらわれずに女性枠が意識された人選となるやもしれない。

そういえば安倍首相が成長戦略の柱の一つとして打ち出した「女性の活躍推進」政策において、「上場企業に女性役員を1人」というのもあった。日銀の審議委員は日銀の役員である。日銀理事も役員であるが、こちらも全員男性となっている。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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