金融政策の正常化こそが好影響との見方
米国株式市場はここにきて再び上昇圧力を強め、ダウ平均は4月18日に18000ドルの大台を回復した。今年に入ってからの原油安やその要因ともなった中国経済の減速などによるリスク回避の動きで、米国株式市場も大きな調整が入った。しかし、このリスク回避の動きは原油価格の下落が一服するなどしたことで終了し、2月11日あたりを起点にダウ平均は切り返してきた。
このままの勢いが続くと昨年5月の過去最高値(5月19日の18351.40ドル)に接近することも予想される。米国の中央銀行であるFRBが昨年12月に利上げをし、今年も何回かの利上げも予想されているにも関わらず何故、ここまで米国は株価がしっかりしているのであろうか。
市場では、予想されたよりもFRBの利上げのペースが緩やかになりそうなため、マーケットフレンドリーとみられるFRBの姿勢を好感しての上昇との見方がある。しかし、FRBは利下げをしようとしているわけでもなく、利上げを中止したわけでもない。利上げに向けた姿勢は維持している。
むしろこのFRBの利上げに向けた姿勢の維持こそが、米国株式市場の上昇の背景にあるとの見方もできまいか。中国など新興国経済の減速への懸念もあり、原油価格もサウジアラビアとイランなどのにらみ合いも加わって簡単には上昇しそうにない。いわゆるリスクオフの懸念は残るが、ここにきての米国市場動向をみると原油価格の動向に一喜一憂することもなくなりつつある。
これはFRBが正常化の道を歩むことができる環境こそが、米国株を支えているためとの見方はできないだろうか。FRBは雇用等の状況を確認しながら、テーパリングを成功させ、予定通りに昨年12月に利上げも行ってきた。これは百年に一度という世界的な金融ショックの影響も後退しつつあるなか、まさに正常化が必要とみなされたのと見方もできるのではなかろうか。
だからこそすでに平時にも関わらず、デフレ脱却に向けて異次元の緩和を続けている日銀や、やはりデフレへの懸念によりマイナス金利政策を続けているECBの追加緩和に対して、市場がポジティブな反応を示さなくなっていると言えるのではなかろうか。
いまは慎重さは必要ながら、方向性は正常化、つまり本来あるべき金融政策の姿に戻すことが必要とされ、それを実行している米国市場が素直に反応しつつあるとの見方はできまいか。もしそうであれば、日銀やECBがこれからすべきことは追加緩和よりも経済情勢を確認しながらのテーパリングではなかろうか。