Yahoo!ニュース

国債売買高が低迷、新たなリスクに

久保田博幸金融アナリスト
日本証券業協会のデータを基に作成

6月20日に日本証券業協会は5月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

5月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行-3419(-281、-823、-1570)

地方銀行 234(-86、906、-279)

信託銀行-2415(-1881、1088、-496)

農林系金融機関 2230(2249、187、-150)

第二地銀協加盟行 640(150、220、130)

信用金庫-1099(67、268、113)

その他金融機関 1374(171、2010、-178)

生保・損保-2541(-3316、475、625)

投資信託-131(-466、322、327)

官公庁共済組合-117(-97、32、175)

事業法人-135(-2、11、18)

その他法人-350(101、11、17)

外国人-16775(1347、-6186、-10933)

個人 342(1、29、7)

その他 13842(1489、941、15154)

債券ディーラー 906(65、309、534)

都銀はそれほど金額は大きくはないが買い越しに転じた。海外投資家は中期ゾーンを主体に引き続き大幅買い越しとなった。先月と同様に長期債も買い越してはいるが、超長期債は売り越している。

国債の投資家別売買高(一覧)での合計の国債売買高でみてみると、2016年5月の国債売買高は162兆1940億円となり、統計のある2004年4月以降最低となった。それまでの国債売買高で最も少なかったのは2005年12月の187兆1997億円であった。ちなみに2005年度の国債残存額は527兆円程度であり、今年度は838兆円程度となっている(財務省、国債残高の推移より)。

この要因としては都銀や生保などによる売買高が大きく減少してきたことがあげられよう。それに対して海外投資家の国債買い付け額に占めるシェアは25%程度あり、存在感を強めている。

日銀のマイナス金利政策などにより国債利回りは15年を超すゾーンもマイナスになるなどしたことで国内投資家は国債の売買を手控えつつある。現在の国債市場が海外投資家と日銀トレードを行っている日銀と業者だけとなりつつあるという歪な状況に陥っている。このまま国債の売買高が低迷するとなれば、国債取引の厚みがさらに薄くなり、国債の価格変動リスクが今後大きくなる懸念がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事