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6月末時点での日本国債の保有者

久保田博幸金融アナリスト
日銀の資金循環統計の数字を基に作成

日銀は9月26日に資金循環統計(4~6月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は6月末時点で約1746兆円となり、3月末の約1752兆円から減少した。個人の金融資産の内訳は「現金・預金」が前年比1.2%増の約920兆円、「株式等」が16.6%減の約144兆円、「投資信託」は11.7%減の約87兆円となっていた。英国のEU離脱観測によるリスク回避の動きなどにより円高株安の影響を受けたとみられる。

この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。残高トップの日銀の国債保有残高は344兆8685億円となり、34.9%のシェアとなった。前期比(確定値)からは27兆7499億円の増加。残高2位の保険・年金基金は251兆73億円(25.4%)、6兆4714億円増。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で226兆5625億円(22.9%)、6兆3594億円減。前回の5位から4位に上がったのが海外投資家で54兆6763億円(5.5%)、3兆7258億円増。5位が公的年金の52兆3919億円(5.3%)、23億円減。6位が家計の13兆9796億円(1.4%)、2240億円増。その他が43兆9514億円(4.5%)、4427億円減となっていた。

2016年3月末(確報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は約32兆円増加し、約987兆円となった。このうち日銀が約345兆円と35%を占め、民間の保険・年金が約252兆円で25%、次が銀行など民間預金取扱機関の約227兆円の23%となった。

3月末(確報値)に比べて大きく増加したのは、大量に国債を買い入れている日銀で約28兆円の増加となった。次いで保険・年金の約6兆円増となっていた。3月末に比べて大きく減少したのが国内銀行の約4.9兆円減と中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行含む)の約1.6兆円減となり、他の業態は概ね増加となっているところが多かった。

日銀は1月29日にマイナス金利政策を導入し、2月9日には10年債利回りもマイナスとなり、7月にはマイナス0.3%まで低下していた。この期間(4月から6月)も国債は買い進まれていたが、日銀が淡々と買入オペで国債を購入し続けるなか、生保などはプラス利回りの国債を中心に購入し続けていたとみられる。それに対して銀行などはマイナス利回りでの運用は難しくなり、国債の残高を減らしていたものとみられる。

短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1105兆円となり、日銀が約398兆円で36.0%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約111兆円と短期債を含めると国債全体の10.0%のシェアとなっていた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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