アップルに740億円支払を命じさせた特許の驚くべき内容

(写真:ロイター/アフロ)

「アップルに賠償命令=特許侵害で740億円―米連邦裁」というニュースがありました。バーネットX・ホールディングという企業による特許侵害訴訟に敗訴したそうです。地裁評決なので今後覆されることは十分にあり得ますが、サムスンとの最初の裁判で得た賠償金が帳消しになるレベルの金額ですね。

既に評決文がネットにアップされています。

原告のバーネットX社(Virnet X)は上記記事では「米インターネットセキュリティーソフト大手」と書いてありますが、米国の報道記事では「パテントトロール」と書かれているものが多いです。米国では、特許ライセンス専業企業(NPE)は差止め請求が認められにくい(ゆえに訴訟戦略上も不利になる)ので、製品販売事業も形式的に行なっておくことでこの問題を避けようとする企業もありますが、バーネットX社もそのパターンなのかもしれません。同社は過去にマイクロソフトから2億ドルの賠償金も勝ち取り、シーメンス等の大手企業とライセンス契約を結ぶなど、NPEとして見るとかなりの”ハイパフォーマンス”企業です。

ここで問題になっている特許は、US6502135US7490151US7418504US7921211の4件です。対象となったアップルの製品は、VPN on Demand、FaceTime、iMessageです。

基本的なアイデアはどの特許もだいたい同じで、VPN接続をダイナミックに構築するというものです(まさにオンデマンドVPN的なアイデアです)。例として、一番範囲が広いと思われるUS6502135(Agile network protocol for secure communications with assured system availability)を見てみましょう。優先日(実効出願日)は1998年10月30日です。クレーム1は以下のようになっています。

1. A method of transparently creating a virtual private network (VPN) between a client computer and a target computer, comprising the steps of:

(1) generating from the client computer a Domain Name Service (DNS) request that requests an IP address corresponding to a domain name associated with the target computer;

(2) determining whether the DNS request transmitted in step (1) is requesting access to a secure web site; and

(3) in response to determining that the DNS request in step (2) is requesting access to a secure target web site, automatically initiating the VPN between the client computer and the target computer.

かいつまんで訳すと、「DNSによるアドレス解決の時に相手が安全なサーバであれば動的にVPNを構築する」というそれだけのアイデアです。

感覚的にはこれに新規性があるとは思えないのですが、今までマイクロソフトとアップルの弁護士が総力を結集しても無効にできなかったということは、そう簡単に新規性を否定する先行文献は見つからないのでしょう。1998年10月以前にこのアイデアを開示していた文献を見つけた方は、アップルに教えてあげればものすごく感謝されることになるでしょう。