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学校がブラック化している 非常勤の実態

前屋毅フリージャーナリスト

埼玉県さいたま市で開かれた「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」の研究会に参加してきた。そこで「臨時教職員(非正規教職員)」の実態を垣間見て、まさに「唖然」とした。

臨時教職員(非正規教職員)、つまりパートタイムの教職員が増えている。なぜ、増やされているのか。端的に言えば、「安上がり」だからだ。多くの産業現場で非正規、パートが増やされているのと同じ理由で、学校現場でも臨時(非正規)が増やされている。臨時といいながら、状態化しているのが現実なのだ。

その収入は、常勤の3分の1から4分の1でしかないという。もっと具体的に言えば、月収で10~15万円(市町村の費用の場合、県費だともう少し多くなる)にしかならない場合も珍しくないというのだ。それも、1校だけでなく、数校をかけもちしての結果なのだそうだ。学習塾の講師と兼任している例も珍しくないそうで、それは当然ともいえる。

それでも、その収入に見合った働き方で許されているなら納得もできる。しかし実態は、「常勤と変わらない働き方を強制」されているのだ。常勤と同じように、面倒な保護者とのやりとりも押しつけられる場合もある。

つまり、安い賃金にもかかわらず責任と負担ばかりが重くなっているのが臨時(非正規)教職員の実態なのだ。ブラック企業が大きな話題になったが、それに負けず劣らず学校はブラック化している。

ブラック化した企業が、良い製品、良いサービスを生み出さないなのは誰もが承知しているはずである。同じように、ブラック化している学校に良い教育を期待できるわけがない。

しかも教育は、機械化できるものでもない。手塩にかけて、人が人を育てていくもののはずだ。なにより育てる側の質の向上を優先しなくてはならい。

その育てる側にいる人間が、生活にも困る、誇りももてない労働環境のなかにいるというのでは、まるで話にならない。

それを疎かにしているところに、この国の教育の危うさがある。

ほんとうに子どもたちの未来を託す気があるのなら、自分の子のよりよい成長を願うのなら、学校のブラック化を許してはいけない。臨時(非常勤)教職員の問題を真剣に考えなければならない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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