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関東甲信が梅雨入り 梅雨入りは、なぜあとから見直されるのか

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
列島を雲が覆い、南から湿潤な空気が流れ込んでいる

29日午前、関東甲信地方の梅雨入り発表がありました。平年より10日早く、統計史上3番目の早さです。

ただし、これはあくまでも「速報値」です。夏が終わってから、必要に応じて見直され、「確定値」となります。今回の梅雨入りも、「やっぱり違った」という可能性は残ります。

季節に線を引く難しさ

梅雨入りした数日後に晴れ間が広がって、「さっそく晴れている!」という声を聞くことがありますが、これは当然といえば当然のことです。

雨雲を生む梅雨前線は、南北に大きく波打っています。雨雲が波のように日本列島にかかってきては、南へ遠ざかって晴れ間が出ます。

雨と晴れが繰り返され、徐々に変化していく季節に、人間が1本だけ線を引く。梅雨入り発表は、そもそも無茶なことをしているわけです。

今年も気象関係者の中で、今週と来週のどちらが妥当か、見解は割れています。

頼れない予報

さらに、梅雨入り日を決めるのを難しくしているのが、「梅雨時の予報」です。

気象庁の予報官は、週間予報の「このさき曇りや雨の日が多くなる」を参考に、梅雨入り日を決めます。

予報の適中率は、先日書いたように、今は翌日で85%を超えるまで上がってきていますが、それでも、くねる梅雨前線の動きに翻弄される梅雨時は、どうしても予報が外れることが増えます。週間予報の5日や7日先となると、なおさらです。

そのため、「晴れると予報していたのに、雨が続いた。やっぱり、あのタイミングが梅雨入りでした」ということも。この予報の難しさが、梅雨入り日が「やっぱり違った」の一因となっています。

梅雨入りは予報官の主観しだい?

だったら、予報ではなく、実際に起こった天気で決めるのが一番です。

夏が終わってからと言わずに、日がたたないうちにやってしまえばいいのです。

ただ、問題は、梅雨入りは気象庁予報官の主観で決まっていて、(少なくとも表に出ている)明確な基準はないとうことです。

近年の梅雨入りの確定日をみると、 

■梅雨入り平年日の、前後2週間以内

■5日間のうち、3日以上が曇りや雨

と、概ねなっています(東京)。

例えば、こういう条件が現れた時点で、梅雨入りを発表するという決め方もあります。

個人的には、人それぞれ感じたタイミングが「梅雨入り」でいいのではと考えています。ただ、梅雨入りは、流通業者が販売戦略を変えたり、農作業の目安になったりと、「情報」の側面ももっていて、発表してほしいという声が多いのも事実です。

その声にこたえるためにも、気象庁は「やっぱり違った」を減らす工夫が必要なのでは、と思います。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

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