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主な新興国/米国経済ニュース(17日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米シティ、不適切なRMBS販売で7100億円の和解金支払いで合意

米金融大手シティグループ<C>は14日、2008年の世界的な金融危機当時に、利益追求を優先するため、リスクが高いRMBS(住宅ローン債権を裏づけとした資産担保証券)やCDO(多数債権プール型債務担保証券)を不適切な方法で投資家に販売したとして米司法当局の調査を受けていた問題で、70億ドル(約7100億円)の和解金を米司法省と複数の州政府当局に支払うことで合意したことを明らかにした。

問題となったRMBSとCDOはシティが2003-2008年に組成したもので、和解金の内訳は、40億ドル(約4070億円)が制裁金で、25億ドル(約2540億円)は住宅取得者の経済的負担を軽減するための住宅ローンの返済条件の改善措置、また、残りの5億ドル(約510億円)が5つの州政府とFDIC(米連邦預金保険公社)への和解金支払いとなっている。

この和解成立で、今後、シティは民事の損害賠償訴訟を提起される恐れがなくなったが、4-6月期(第2四半期)決算で約38億ドル(約3860億円)の税引き前損失を計上し、純利益も前年同期の42億ドル(約4300億円)からわずか1億8100万ドル(約180億円)に急減し、利益の大半を失った。

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米たばこ2位大手レイノルズ、同3位ロリラードを2.8兆円で買収合意

米たばこ2位のレイノルズ・アメリカン<RAI>は15日、同3位のロリラード<LO>を、債務承継分を含めて1株当たり68.88ドル、計274億ドル(約2.8兆円)で買収することで合意したことを明らかにした。

今回の大型合併によって、米国のたばこ市場は「マルボロ」で知られる売り上げ1位のアルトリア<MO>に次いで2位となる。また、レイノルズの買収後の売り上げは110億ドル(約1.1兆円)余り、また、営業利益も約50億ドル(約5100億円)、それぞれ拡大する見通し。

しかし、レイノルズとロリラードの合併が米独禁当局から最終的に承認されるには、合併後の市場の寡占化を防止する観点から、両社は資産の一部を売却する必要性があり、その場合、英たばこ大手インペリアル・タバコ・グループが資産買収のカギを握っている。

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米グーグル、フォードのムラリー前CEOを取締役に起用

米インターネット検索大手グーグル<GOOG>は15日、自動車大手フォード・モーター<F>のアラン・ムラリー前CEO(最高経営責任者)が同社の取締役に就任したことを明らかにした。

同氏は今月1日にフォードを退社しており、在任中は世界ソフト最大手の米マイクロソフト<MSFT>の次期CEO候補として最有力視されたが、任期途中を理由に就任を固辞していた。ムラリー氏はすでに9日付でグーグルの11番目の役員に就任しており、今後は取締役会の監査委員会の職務を担当する予定。

同氏はフォードの前には2001-2006年に米航空・宇宙大手ボーイング<BA>の副社長も務めており、グーグルに移籍することによって、自動車と航空宇宙の両産業に関する専門知識や経験が生かされる。グーグルは自動走行の自動車や自動車向け情報・娯楽システム、人工衛星や太陽光発電で動くドローン(無人飛行機)を利用したインターネット接続などの新事業分野への進出を目指している。

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JFEエンジニアリング、セメン・インドネシアと共同で廃棄物発電所建設へ

JFEエンジニアリングは、インドネシア国営セメント大手セメン・インドネシアと共同で、東ジャワ州に廃棄物を焼却して発生する高温燃焼ガスで発電する廃棄物火力発電所(発電出力は3万0600キロワット)を建設する。投資額は6380億ルピア(約55億円)。ジャカルタ・グローブ(電子版)などが15日に伝えた。

同発電所は2016年末までに稼働を開始する予定で、これによって、セメンは年間で電力コストを1000万ドル(約10億円)削減したいとしている。これより先、インドネシア国営電力公社PLNは2月に産業向け電力料金を今年38%引き上げる計画を明らかにしている。

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トヨタ、インドネシアの6月新車販売台数は前月比23%増に

トヨタ自動車傘下のトヨタ・アストラ・モーター(トヨタとアストラ・インターナショナルとの合弁会社)は6月の新車販売台数が前月比23.6%増の3万9107台となったことを明らかにした。ジャカルタ・ポスト(電子版)が16日に伝えた。

同社のスパルノ・ジャスミン副社長によると、6月の販売台数は同社の月間平均3万7000台を上回っており、市場シェアも35.4%に達し、会社目標の34%を上回ったとしている。車種別の内訳は、セダン車が前月比1.1%増の1083台、小型車は同39.1%増の9946台、新型車の「アストラ・トヨタ・アギア」は同35.6%増の5849台、MPV(ミニバン)は同20.2%増の1万7396台、SUV(スポーツ用多目的車)は4469台だった。

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ウクライナ中銀、公定歩合を12.5%へ引き上げ―13年ぶり高水準

ウクライナ中央銀行は16日、自国通貨の急落に伴うインフレの急速な悪化に対処するため、政策金利である公定歩合を9.5%から12.5%へ一気に3%ポイント引き上げることを決めた。利上げは17日から実施される。これは2001年以来13年ぶりの高水準となる。

同中銀は今回の大幅利上げについて、自国通貨フリブナが急落してインフレが急加速していることから、利上げによってインフレを鎮静化させるのが狙いとしている。政治危機によって同国のインフレ率は急速に上昇している。1月のCPI(消費者物価指数)は前年比0.5%上昇だったが、5月には10.9%上昇、さらに、6月には12%上昇と、伸びが急加速。その一方で、フリブナは今年に入って以来、対ドルで30%も下落し、インフレを悪化させている。また、政府が170億ドル(約1.7兆円)の外国から金融支援を受けるために公共料金の値上げを決めたこともインフレを悪化させる原因となっている。

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ブラジル中銀、政策金利を維持―全員一致

ブラジル中央銀行(BCB)は16日の金融政策決定委員会で、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を市場の大方の予想通り、現行の11%のまま据え置いた。全員一致だった。

中銀は、昨年4月の0.25%ポイントの利上げ以降、4月会合時まで9回連続で計3.75%の利上げを実施したが、前回5月会合で政策金利を据え置き、利上げサイクルに終止符を打った。11%という現行の金利水準は2011年11月以来2年8カ月ぶりの高水準となっている。

政策決定後に発表された声明文は、前回会合時と同様に、「マクロ経済のシナリオの進展状況とインフレの見通しを勘案した結果、全員一致で、今回は、政策金利を11%に据え置いた」との文言を変えていない。

ただ、市場では、今回の声明文で、「今回は」という文言が削除されるとの見方があった。この文言が再度使われたことについて、地元経済紙バロール・エコノミコは、「この文言は今回の金融政策を短期的なもので、中銀は金融政策に対しオープンスタンスであることを示す」と指摘する。ただ、これまでの計3.75%ポイントの利上げにもかかわらず、インフレが物価目標(2.5-6.5%)の中央値(4.5%上昇)に向かって収斂する気配が見られないことから、今後、中銀が利上げを再開するのか、または、利下げに転じるかどうかについては、「アレシャンドレ・トンビニ中銀総裁はこれまでの利上げサイクルの効果が出るまでには時間がかかるとの見方を強めている」とし、中銀は利上げ効果を待つ可能性があると見ている。

インフレの見通しについては、中銀が14日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2014年は前週予想の前年比6.46%上昇から6.48%上昇へ下方修正(悪化)された。2015年の見通しは前週予想の6.1%上昇のまま据え置かれたが、1カ月前の予想6.08%上昇を上回っている。

一方、中銀が6月26日に発表した最新の四半期インフレ報告では、標準シナリオで2014年は6.4%上昇(前回3月発表時は6.1%上昇)、2015年は5.7%上昇(同5.5%上昇)、2016年4-6月期は5.1%上昇と、徐々に減速すると予想しており、中銀はこれまでの利上げサイクルのインフレに及ぼす影響は遅れて出る傾向があり、いずれ効果が完全に出てくると主張している。

次回の金融政策決定委員会は9月2-3日に開かれる予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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