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主な新興国/米国経済ニュース(25日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

17-21日のロシアRTS指数、3週ぶり大反発―ルーブル高と原油高で

前週(17-21日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)の21日終値が前週比5.8%高の1058.8と、週間ベースで3週ぶりに大反発した。

これはECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁がユーロ圏のデフレ回避と景気回復のため、資産買い取りプログラムの拡大を示唆したことや、中国の中央銀行が利下げと銀行システムへの流動性供給の拡大を決定したことで海外市場が好転する一方で、ロシア通貨ルーブルも対ドルで上昇に転じ、ロシア経済を下支えする原油価格も上昇したことが好感され、5営業日続伸となったもの。

週明けの17日は、原油安が続いたものの、EU(欧州連合)の外相会議で対ロシア追加経済制裁が見送られたこと好感され、RTS指数は0.4%高と反発。翌18日はドラギECB総裁が前日夕にユーロ圏経済が2015-2016年に回復するとの見通しに加え、一段の景気刺激策を行う可能性を示唆したのを受けて、RTS指数は1.66%高と急伸。19日も3営業日続伸となった。20日は新たな対露制裁の不安も薄れたことでルーブルが上昇し、原油価格も指標のブレント原油先物が1バレル当たり78ドルを超えて上昇したことで、RTS指数は1.88%高と、大幅高となり、週末の21日もOPEC(石油輸出国機構)が27日の会合で減産を決定するとの観測が強まる中で、ブレント原油先物が80ドルを突破し、中国の利下げ決定もルーブル上昇と原油高に寄与し、RTS指数は1.77%高と、2日連続で急騰した。

今週(24-28日)のロシア市場は、引き続き原油とルーブルの相場動向などが焦点となる見通し。特に、27日のOPEC会合の結果が注目されるが、アナリストは減産決定で原油価格は下支えされ、新年に向けての相場急騰を期待している。

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前週のインド株は5週続伸―中国利下げや政府の改革期待で=BRICs市況

前週(17-21日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の21日終値は、前日比1%高の2万8334.63となり、終値ベースでも過去最高値を更新した。週間ベースでも14日終値比288ポイント(1%)高と、5週続伸となった。

週末の中国の利下げ決定はインド経済にとって景気刺激となるとの見方や、日本経済のリセッション(景気失速)入りで、インド中央銀行の利下げによる景気刺激の可能性も高まるとの見方が広がり、相場を下支えした。

週明けの17日は、商工省が発表した10月の貿易収支が予想以上に強かったことから景気改善が示されたとの見方で、幅広いセクターで買いが入り、SENSEXは0.7%高の2万8177.88で引け、終値ベースで初めて2万8000ポイントの大台を突破した。18日は利益確定売りに押され、SENSEXは0.05%安と、小反落し、19日も3日連続で日中高値の過去最高値を更新したが、最近の相場上昇は速すぎるとの見方で、SENSEXは0.5%安と、続落して引けた。なかでもインド自動車大手タタ・モーターズが3週ぶりの大幅下落となっている。

20日は自国通貨ルピーが9カ月ぶり安値となったことで輸入物価上昇懸念が強まり、インド中銀の12月2日の金融政策決定会合での利下げ観測が後退したことで、利益確定売りに押されたが、IT大手インフォシス・テクノロジーズが1%高となり上場来高値を付けるなどで、SENSEXは0.1%高と、反発した。週末の21日は、政府による改革が早まり、景気回復への期待感が強まった。特に、タック・マヒンドラ銀行がINGバイシャ銀行を1500億ルピー(約2850億円)で買収する合意したことから上場来高値を付けるなど、銀行セクターに幅広く買いが入り、SENSEXは2日続伸となった。

今週(24-28日)のインド市場は、景気動向や中銀の利下げ観測が引き続き相場に影響を与える見通し。主な経済指標は、28日の7-9月期GDP(国内総生産)など。

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前週のブラジル株は3週ぶり大反発―財務相人事好感され=BRICs市況

前週(17-21日)のブラジル株式市場は、21日のボベスパ指数が前日比5%高の5万6084.04と、2011年8月以来4年3カ月ぶりの大幅高となり、週間ベースでも14日終値から8.3%高と、3週ぶりの大反発となった。年初来では依然として0.51%高と、前年水準を上回っている。

週末に、市場の注目を集めていた閣僚人事で財務相にジョアキン・レビ元財務局長、また、新企画相に財務省のネルソン・バルボサ経済政策局長、中央銀行のアレシャンドレ・トンビニ総裁も留任するとの観測が市場で好感された。特に、レビ氏は2003-2006年にルラ前大統領の下で財務局長を務めており、アナリストもレビ氏は財務相としては市場寄りで投資家受けが良いと評価も高い。

週明けの17日は、ペトロブラスがマネーロンダリングを含む汚職事件のあおりで2014年7-9月期(第3四半期)決算発表の時期を14日から12月12日に延期したため、証券当局から罰金を科せられる見通しとなったことから4.5%安となったほか、ブラジル中央電力も赤字決算で9.1%安となり、ボベスパ指数は1%安となり、3営業日続落した。18日は相場に割安感が出たことから金融株を中心に買われ、フラスコ銀行が4.5%高となる中で、ボベスパ指数は1.6%高と、4営業日ぶりに反発。

19日は11月半ばまでの拡大消費者物価指数がアナリスト予想を下回る伸びとなり、10月の失業率も4.7%と、同月としては過去最低水準に改善したことが好感され、ボベスパ指数は2.6%高と、大幅高となった。20日は「黒人意識向上の日」の祝日で休場だった。週末の21日は、組閣人事に加え、ペトロブラスが12%高と、6年ぶりの大幅高となり、レアルも2.3%高と、急騰したことから、ボベスパ指数も5%高と、急伸した。

今週(24-28日)の株式市場に影響することが予想される主な経済指標や行事は、10月経常収支(24日)や7-9月期GDP(国内総生産)伸び率(28日)など。

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スズキ、マレーシアに新型SUV「スズキ Sクロス」を投入へ

スズキが40%出資しているマレーシアの総販売代理店スズキ・マレーシア・オートモービルは、20日、新型SUV(スポーツ用多目的車)「スズキS-CROSS(エスクロス)」の市場投入を正式に発表した。同社では、今年末までに約60台、また、今後12カ月で400台の販売を目指すとしており、同社の全体の売上高を10%押し上げるのに寄与すると見ている。地元紙ニュー・ストレート・タイムズ(電子版)が21日に伝えた。

この新型SUVは日本を除くアジアでは、シンガポールでの販売開始に続いて、マレーシアが2番目となる。同SUVはハンガリー工場で生産されたあと、マレーシアに輸入する計画で、同社では来年3月期で5億リンギット(約175億円)の売り上げを見込んでいる。

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欧州議会、米グーグルの市場独占阻止で事業解体を目指す構え

欧州議会の最大会派である欧州人民民主党と欧州社会党は、欧州のインターネット検索市場で独占的地位にある米グーグル<GOOGL>の解体を目指す決議案を採択する構えだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が先週末に伝えた。

同紙が入手した議会決議案の草案によると、グーグルの市場独占を解消するには、グーグルを検索エンジン事業部門とそれ以外の事業部門に解体すべきだとしている。欧州議会が特定の企業を取り上げることは極めて稀な事例だが、この背景には欧州議会を牛耳るドイツ政府やドイツの主力企業がグーグルの独占状態を好ましく思っていないことが背景にあると見られている。

決議案が採決されても、欧州議会には企業解体の強制力はないものの、EU(欧州連合)の行政執行機関であるEC(欧州委員会)は議会の意向を尊重する形で、EU競争法違反の疑いでグーグルを調査するか、あるいは、グーグルの事業活動を制約する法律を導入する可能性がある。

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米エバーコアISI、米イーベイの投資判断を「セル」へ引き下げ

米金融調査大手エバーコアISIのアナリスト、ケン・セナ氏は先週末、米ネット競売大手イーベイ<EBAY>の株式投資判断を「ホールド(待ち)」から「セル(売り)」へ引き下げたことを明らかにした。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチが伝えた。

投資判断を引き下げたのは、イーベイ傘下の世界オンライン決済サービス最大手ペイパルがスマートフォンなどの携帯電話会社の決済サービスとの競争が激化するリスクが高まったことを挙げている。また、同氏はイーベイの予想適正株価を1株当たり52ドルから49ドルに引き下げた。同社の株価は21日、0.22%安の54.42ドルで引けている。

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タイのパイブーン法相、戒厳令は当面解除せずと言明

軍事政権下にあるタイのパイブーン・クームチャヤ法相は先週末、ロイター通信に対し、軍事クーデターに対する国民の反発が強まっている中、戒厳令は当面、解除しない方針を明らかにした。英BBC放送(電子版)などが伝えた。

これより先、同国のプラユット・チャンオチャ首相は20日に、記者団に対し、戒厳令は社会混乱や暴動を抑えるために必要との認識を示しており、法相も同様な認識を示した。タイでは今年5月22日に軍部がクーデターで政権を掌握しており、軍事クーデターに反対する勢力への弾圧を強めているとの批判が続いている。

軍部は2015年後半に総選挙を実施し、民主主義の回復を約束しているが、人権擁護団体などの国際世論は、それまでに軍部が権力掌握を強める恐れがあると懸念を示している。

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ブラジル中銀週報:2014年インフレ見通しを2週連続で下方修正

ブラジル中央銀行が24日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2014年は前週予想の前年比6.4%上昇から6.43%上昇へ下方修正(悪化方向)された。下方修正は2週連続。1カ月前の予想は6.45%上昇だった。2015年の見通しも前週予想の6.4%上昇から6.45%上昇へ下方修正された。1カ月前の予想は6.3%上昇だった。

また、2014年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比0.21%増から0.2%増へ下方修正された。1カ月前の予想は0.27%増だった。また、2015年のGDP伸び率見通しは前週予想の同0.8%増のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は1%増だった。

一方、2014年末時点の政策金利見通しは、前週予想の11.5%のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は11%だった。2015年末時点の見通しも前週予想の12%のまま据え置かれた。据え置きは3週連続。1カ月前の予想は11.5%だった。次回12月2-3日の金融政策決定会合時の政策金利の見通しも前週予想の11.5%のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。

為替レートの見通しは、2014年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.53レアルから2.55レアルへ引き上げられた。引き上げは4週連続。2015年末時点の対ドルレートも前週予想の2.61レアルから2.65レアルへ引き上げられた。引き上げは4週連続。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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