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主な新興国/米国経済ニュース(30日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米アップル、2015年1-3月期は依然アイフォン好調で増収増益―株価急騰

米IT大手アップル<AAPL>が27日に発表した2015年1-3月期(第2四半期)決算は、急激なドル高の悪影響にもかかわらず、主力のスマートフォン「アイフォン」の売り上げが前期に続いて堅調となり、純利益が前年比33%増の135億7000万ドル(約1兆6100億円)、1株当たり利益(希薄化後)も株式分割調整後で同40%増の2.33ドルとなり、アナリスト予想の2.16ドルを上回った。

また、売上高も同27%増の580億1000万ドル(約6兆9000億円)となり、アナリスト予想の561億ドル(約6兆7000億円)を上回った。アイフォンは同40%増の6117万台と、アナリスト予想の5680万台を超え、金額ベースでも前年比55%増の402億8000万ドル(約4.8兆円)と、アナリスト予想の367億6000万ドル(約4.4兆円)を上回り、売り上げ全体の69%を占めた。一方、タブレット型PC「iPad(アイパッド)」の販売台数は同23%減の1262万台と、減少したが、PC部門のマックは同10%増の456万台となった。

こうした増収増益の決算結果を受けて、同社は2017年3月末までに、自社株買いと増配によって株主への利益還元額を従来の1300億ドル(約15兆5000億円)から2000億ドル(約23兆8000億円)へ拡大するとしている。自社株買いの規模は従来の900億ドル(約10.7兆円)から1400億ドル(約16.7兆円)へ、また、配当金も11%増配の1株当たり52セントへ引き上げるとしている。配当金は5月11日現在の株主に対し、同月14日に支払われる。

一方、今期(4-6月期)の業績見通しについては、売上高は460億-480億ドル(約5.5兆-5.7兆円)を予想し、アナリスト予想と一致した。

同社の株価は27日、1.82%高の132.65ドルと、急騰したあと、時間外取引でも米東部時間午後7時59分時点で、さらに1.33%高の134.42ドルとなっている。

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米ジェネリック大手マイラン、イスラエル同業大手テバの買収提案を拒否

米ジェネリック(後発医薬品)大手マイラン<MYL>は27日、イスラエルの同業大手テバファーマスーティカル・インダストリーズが提示した株式と現金による総額401億ドル(約4.8兆円)の買収金額が低すぎることや当局の合併承認を得るリスクも高いとして、買収提案を拒否したことを明らかにした。

マイラン側は買収額が今回の提示額である1株当たり82ドルを22%上回る1株当たり100ドル以上でなければ買収交渉に応じないとしている。82ドルの提示額はマイランの3月10日時点の株価よりも48.3%のプレミアム(上乗せ額)となっている。

テバファーマスーティカルは世界最大のジェネリックメーカーとして知られるが、両社とも市場競争が激しいこの分野で他社の買収によって優位な立場を確保したい考えだ。マイラン自体もアイルランドの同業大手ペリゴを約300億ドル(約3.6兆円)で買収しようとしているが、ペリゴはこの提案を拒否している。

米経済専門チャンネルCNBC(電子版)などによると、カナダの投資銀行RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ランドール・スタニッキー氏は、「テバファーマスーティカルがマイランに対する買収提示額の引き上げは、マイランがペリゴへの買収額引き上げよりも簡単なことだ」と指摘している。

マイランの株価は27日、5.71%安の71.72ドルと、急落した。そのあとの時間外取引では米東部時間午後7時59分時点で0.99%高の72.43ドルと、やや値を戻している。

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三菱自動車とプジョー・シトロエン、ロシアで操短と一時生産停止へ

三菱自動車と仏自動車大手PSAプジョー・シトロエンは、ロシアでの新車販売が急速に悪化していることに対応するため、27日から一部の車種で現地生産の停止に踏み切った。モスクワ・タイムズ(電子版)が伝えた。

プジョー・シトロエンは27日から7月10日までの2カ月半にわたり、ロシア南部カルーガ州にあるピーシーエムエー・ルス(PCMA Rus)工場でのセダン車「シトロエンC4」と「プジョー408」の2車種の生産を停止した。

同工場は三菱自動車との合弁会社PCMAが運営する車両組立工場で、三菱自動車も27日から5月12日まで、SUV(スポーツ用多目的車)の「アウトランダー」と「パジェロ・ショート」の操業短縮に入った。

ロシアに進出している外国企業で構成する欧州ビジネス協議会(AEB)によると、プジョーの3月のロシアでの新車販売台数は前年比79%減のわずか545台、シトロエンも同月は同79%減の484台、三菱自動車も同68%減の3250台と、急減している。ロシア全体でも3月の販売台数は同42.5%減と、大幅に落ち込んでいる。

PCMAは2010年4月に三菱自動車が30%、プジョーが70%を出資して設立され、「プジョー308」や「プジョー4007」、「プジョー408」、「シトロエンC4」、「シトロエンCクロッサー」、三菱自動車の「アウトランダー」を組み立てており、2012年から本格生産に入った。年間生産能力は12万5000台でフル操業時の従業員数は2400人。

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インドネシア自動車大手アストラ、株主総会で前財務相らの監査役就任を承認

インドネシア自動車最大手アストラ・インターナショナルの株主総会が28日開かれ、プリジョノ・スギアルト社長の再任とエリー・・フィルマンシャーとスマディ・ジョコ・ムルジョノ・ブロトディニンラットの両監査役(コミッショナー)の退任、また、新監査役としてチャティプ・バスリ前財務相とマリ・エルカ・パンゲストゥ前文化観光相の就任が承認された。監査役の任期は2018年までの3年間。ジャカルタ・ポスト(電子版)などが伝えた。

また、株主総会では、2014年度の利益に対する配当金支払総額を8兆7400億ルピア(約800億円)とする計画案も了承された。これは2014年度の純利益19兆1800億ルピア(約1760億円)の45.56%に相当する。同計画に従って、6兆1000億ルピア(約560億円)の期末配当金が5月29日に支払われる予定。残りの10兆4300億ルピア(約960億円)は内部留保となる。

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タイ中銀、0.25%ポイント再利下げ―2委員が据え置き主張

タイ中央銀行は29日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物レポ金利を僅差の賛成多数で1.75%から0.25%ポイント引き下げて1.5%とすることを決めた。新しい政策金利は即日実施された。利下げは前回3月会合で0.25%ポイント引き下げたのに続いて2会合連続。

中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、「7人の委員のうち、5人が景気回復を強めるために0.25%ポイントの引き下げを主張したのに対し、他の2人の委員は“(前回3月会合での利下げを含め)これまで中銀が実施した金融政策により金融は引き続き緩和状況にあり、最近の景気刺激策の強化によって、ある程度、経済成長が強まると見られる。ポリシーミックス(複数の経済政策手段の一体運営)の効果がはっきりするまで待つべきだ”と主張し、金利の据え置きを訴えた」としている。

また、中銀は声明文で、国内経済の先行きの見通しについて、「景気回復ペースは前回3月会合時に予想したよりも一段と鈍化する可能性がある。公共投資の拡大や観光セクターの回復傾向が経済を下支えすると見られるが、2015年1-3月期のタイ経済は思った以上に弱い個人消費と輸出の伸びを十分に相殺することは難しい」と述べ、改めて景気への懸念を示した。

一方、インフレについて、中銀は、「インフレ上昇圧力は引き続き、内需が予想より弱いため広範囲わたって低下している。生産コスト、特に、原油価格は依然低く、ディスインフレ(物価上昇率の低下)が長期化するリスクが高い。インフレ期待は低下傾向にある」と指摘している。

次回会合は6月10日に開催される予定。

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ブラジル中銀、政策金利を0.5%引き上げ―5会合連続

ブラジル中央銀行は29日の金融政策決定委員会で、市場の予想通り、インフレ上昇を抑制するため、政策金利(セリック)である翌日物金利誘導目標を前回3月会合時と同率の0.5%ポイント引き上げ13.25%とすることを決めた。今回の会合でもアレシャンドレ・トンビニ総裁ら7人の政策委員の全員が大幅利上げを支持した。

中銀は、2013年4月の0.25%ポイントの利上げ以降、2014年4月会合時まで9回連続で計3.75%の利上げを実施し、同年5月会合で政策金利を据え置き利上げサイクルに終止符を打った。しかし、同年10月会合で0.25%ポイント引き上げ半年ぶりに利上げを再開し、今回で利上げは5会合連続となる。利上げ幅も合計で2.25%ポイントに達した。13.25%の金利水準は2008年12月以来の高水準となる。

今回の大幅利上げの背景には、前回会合に続いて、中銀が政府の増税策や物価統制の一部解除によるインフレ期待の上昇に依然として懸念を強めていることがある。実際、中銀が27日に公表した最新の経済週報「フォーカス・ブルティン」で、アナリストはIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレの見通しについて2015年は前週予想の前年比8.23%上昇から8.25%上昇へ下方修正(悪化)し、中銀の物価目標(2.5-6.5%)の上限を大幅に超えると予想している。

また、フォーカス・ブルティンでは、多くのアナリストは29日の金融政策決定会合時の政策金利が13.25%に引き上げられると予想していた。また、2015年末時点の政策金利については13.25%、さらに、2016年末時点では11.5%を予想している。

中銀は政策決定後に発表された声明文で、「マクロ経済のシナリオやインフレの見通しを勘案して、政策金利を0.5%ポイント引き上げることを全員一致で決めた」とし、前回3月会合時に使った文言を変えておらず、今後の中銀の金融政策の方向性を示さなかった。この点について、地元経済紙バロール・エコノミコの29日付電子版によると、方向性が示されなかったことは、今後、中銀が利下げに転じるか、あるいは政策金利を据え置く、利上げキャンペーンを終了させる―のいずれかの可能性を意味するとしている。また、一部のアナリストは今後、中銀は次回6月会合時に0.25%ポイントの追加利上げを実施して、利上げキャンペーンを終わらせると見ている。

次回の金融政策決定会合は6月2-3日に開かれる予定。

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ブラジル中銀週報:2015年インフレ率見通し、8.25%上昇へ下方修正

ブラジル中央銀行が27日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2015年は前週予想の前年比8.23%上昇から8.25%上昇へ下方修正(悪化)された。下方修正は2週連続。1カ月前の予想は8.13%上昇だった。2016年の見通しは前週予想の5.6%上昇のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の予想も5.6%上昇だった。

また、2015年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の対前年比伸び率1.03%減から1.1%減へ下方修正された。下方修正は2週連続。1カ月前の予想は1%減だった。しかし、2016年のGDP伸び率見通しは前週予想の同1%増のまま据え置かれた。据え置きは2週連続。1カ月前の予想は1.05%増だった。

一方、2015年末時点の政策金利の見通しは前週予想の13.25%のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の予想は13.25%だった。2016年末時点の見通しも11.5%のまま据え置かれた。据え置きは17週連続。1カ月前の予想は11.5%だった。また、4月28-29日の次回金融政策決定会合時点での政策金利の見通しも13.25%のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の予想は13.25%だった。

為替レートの見通しは、2015年末時点の対ドルレートは前週予想の3.21レアルから3.2レアルへ引き下げられた。引き下げは2週連続。1カ月前の予想は3.2レアルだった。2016年末時点の対ドルレートは3.3レアルのまま据え置かれた。据え置きは3週連続。1カ月前の予想は3.23レアルだった。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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