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U-20女子ワールドカップ初戦当日。ヤングなでしこが対戦するU-20ナイジェリア代表とは?(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
初戦が行われるスタジアムで公式練習を行ったU-20日本女子代表(C)松原渓

【初戦当日】

大会の開催都市であるポートモレスビーは連日30度を超え、湿気も高く蒸し暑い気候が続いている。

いよいよ今日(13日)、パプアニューギニア(以下:PNG)でU-20女子ワールドカップが開幕し、日本は初戦のナイジェリア戦を迎える。

初戦は、現地時間の19:00(日本時間18:00)キックオフ。

2戦目(対スペイン戦)と3戦目(対カナダ戦)は現地時間16:00(日本時間15:00)キックオフのため、30度近い中での消耗戦となることが予想されるが、初戦は陽が落ちた後の比較的、涼しいコンディションの中で初戦を迎えることができる。

U-20日本代表は、9日に現地入りしてから3日間、初戦に向けてイメージを高めつつ、コンディション調整に努めた。

試合2日前の11日には会場のBava park Stadiumでキックオフの19:00に合わせて公式練習が行われたが、練習時間になってもナイター照明がつかないアクシンデントが発生。暗くなったピッチでは思うようなトレーニングができず、試合前日の14:00に再度、スタジアムで公式練習を行った。

そんなハプニングにも動じることなく、初戦を翌日に控えた選手たちの表情は明るい。

「この2年間ずっと楽しみにしてきた舞台なので、『やっと来たな』という感じです。2年半、積み上げてきた守備や多くの選手が関わる攻撃など、すべてを出しきりたいです。」

そう話すのは、MFの長谷川唯だ。

大会直前、メンバー入りしていた日テレ・ベレーザのチームメート、清水梨紗がケガで離脱することとなった。代表でも長い時間をともにしてきた仲間の無念を思い、

「一緒に(大会に)来られなかったのは本当に残念ですが、その思いも力にして頑張ります。」

と、言葉に力を込めた。

高倉監督は「主力選手」と「控え選手」の区別がなく、誰が出ても同じように戦えるチームを目指してきた。実際それだけの選手層の厚みを持つだけに、スターティングメンバーを予想するのは容易ではない。

だが、初戦のピッチに立つ11人のメンバーは、指揮官の中でようやく固まってきたようだ。

「スタートの11人は頭の中にはあります。大事な試合なので、ある程度、経験も考慮しました。ベースは今まで戦ったメンバーが中心になりますけれど、2、3人、新しい力も試してみたい。フォーメーションを含めて、変化を起こせたらと考えています。」(高倉監督)

【U-20年代の強豪国、U-20ナイジェリア代表】

日本が入ったグループB(ナイジェリア、スペイン、カナダ)は、特に強豪揃いのグループだ。

中でも、初戦を戦うU-20ナイジェリア代表は、過去3大会連続でベスト4に入っており、2010年と前回(14年)大会では準優勝している。愛称は「ファルコネッツ」(「小さなハヤブサ」という意味)。

U-20ナイジェリア代表の公式練習を少しだけ(公開された冒頭15分間)見たが、体の大きさと足の長さは印象的だった。昨年の試合映像を見ると、身体能力を生かした縦に速いサッカーを得意としている。

その中で特に注意したいのは、アフリカ勢ならではのリーチの長さと一歩目の速さ、シュートレンジの広さだ。

2012年にアゼルバイジャンで行われたU-17ワールドカップの準々決勝で、同じアフリカ勢のガーナのロングシュートに苦杯をなめたGKの平尾知佳は言う。

「日本では絶対に飛んでこないようなボールが飛んできたり、スピードやパワーもまったく違いました。今回はそこを意識して、ポジショニングとコーチングをしっかりしたいです。」

シュートを打たせないためにも、相手には常にプレッシャーをかけることが大切だ。だが、寄せるタイミングと間合いを間違えると、一発でかわされて一気にピンチを招く。

攻守を司るボランチの杉田妃和はナイジェリアのスピード対策について、こう話す。

「一発で取りにいったり、蹴って走られたら追いつかないと思うので、(自分が)得意とする、誘い込むプレーで、スピードに乗らせないようなポジションに相手を連れて行けるように、じっくり守りたいと思います」

ボールを動かす技術や、連携して崩す組織力では日本に分がある。日本がボールを持つ時間帯は長くなるだろう。駆け引きの中で常に先手を取り、バリエーション豊かな攻撃と、鮮やかなゴールを見せてほしい。

夜になっても、気温と湿度は25度近くになる。持久戦になる前に、勝負を決めたいところだ。

【陽気な”ファルコネッツ”】

PNGのポスト・クーリエ紙によると、今大会でU-20ナイジェリア代表は、「一文無し」に近い状態で現地入りしたのだという。ナイジェリアはアフリカ最大の経済国でありながら、原油価格の急落に伴い、国内経済の低迷が深刻な状況に陥っている。

今年8月のリオデジャネイロ五輪でも似たようなニュースがあった。男子のU-23日本代表が初戦でU-23ナイジェリア代表と対戦した際、ナイジェリアは資金不足のために航空券が用意できない等のトラブルで、試合当日に現地に到着するという状況に陥った。そのため、コンディション不足が不安視され、状況は日本にとって有利に働くのでは、との見方もあった。だが、試合は4−5で日本が敗戦。その中で、見る側としては「情報に惑わされた」感も否めなかった。

11日にスタジアムで行われた、日本との合同会見で、U-20ナイジェリア代表のDEDEVBO Peter監督は、神妙な面持ちで語った。

「日本は強いチームだと思いますし、私たちはパプアニューギニアの天気や雰囲気にまだ慣れていないので、厳しい試合になると思います。」

今大会、U-20ナイジェリア代表は日本よりも早く(9日の朝)に現地入りしたため、コンディションは日本よりも有利な条件である。

11日のスタジアムでの公式練習で見たファルコネッツ(U-20ナイジェリア代表)は、歌を歌いながら練習するほど、陽気で賑やかなチームであった。

サッカーにおいては「情報戦」も、一つの有効な作戦かもしれない。勝負はすでに始まっている。

初戦に向けた【監督・選手コメント(U-20ナイジェリア代表戦前)】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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