Yahoo!ニュース

U-20女子ワールドカップ第2戦はスペインに惜敗。ヤングなでしこはなぜ封じられたのか?(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
試合は30度を超える暑さの中で行われた(C)松原渓

U-20女子ワールドカップに出場しているU-20日本女子代表は、16日にグループリーグ第2戦でスペインと対戦し、0-1と敗戦。

初の国際大会での敗戦は、このチームをどう成長させるのだろうか。

(1)はこちら

【チームを成長させるもの】

今大会の日本は、日頃からリーグで試合に出ている選手が多く、研ぎ澄まされたゲーム感覚を持っている選手が多いのも強みだ。

だが、スペインのようなフィジカルの強さを持った相手と対戦できる経験は、国際大会ならではである。グループリーグでそれらを身を以(もっ)て知ることができたのは、日本にとって幸運だった。

何より、国際大会における初の敗戦は、このチームにもう一度、自分たちのサッカーをみつめる大きなきっかけを与えた。

高倉監督は、勝ち続けることでチームを進化させてきた。そして、アジアでも世界でも、すべての試合に勝ってきた。今回、このチームは、初めて敗戦から多くのことを学ぶことになった。

だが、どんなチームもいつかは負ける。 そして、その日が来た時、その試練が選手たちを成長させることも指揮官は誰よりも知っている。だからこそ、試合では「ピッチはあなた(選手)たちの場所」と、すべてを選手に委ねてきた。

試合後、選手たちの表情には、落胆よりも、その事実をしっかりと受け止めて前を向こうとする力強さが感じられた。

「世界一になるために、すべてがうまくいくとは最初から思っていません。この試合を機にもっといいチームになれると思いますし、この試合があったから世界一になれた、と思えるようにしたいです。」(乗松)

キャプテンの乗松の口調は揺るぎなかった。

大会中に、このチームはどんな成長を見せてくれるのだろうか。彼女たちの挑戦は、まだ始まったばかりである。

【監督・選手コメント(U-20スペイン代表戦後)】

高倉麻子監督

ーー0−1という結果について、試合を振り返っていかがですか?

厳しい試合になると思っていましたが、スペインの圧力が強く、自分たちの良さを消してしまったという印象です。攻守ともに、出足が遅かったです。後半は少し落ち着いてボールを持てる時間帯も出てきましたけれど、全体的にゲームをコントロールされてしまいました。

ーー右サイドバックに羽座選手を抜擢した意図と、守備陣への評価をお願いします。

彼女はケガから復帰した後、コンディションが上がってきていましたし、サイドバックは慣れない部分もあったんですが、(相手の)10番への対策で十分な信頼を持って送り出しました。守備は全体的に後手を踏む場面が多く、自分たちの良さを出せませんでした。最初から自分たちが主導権を持って試合をする場合も多いので、ああいった形で流れるゲームをコントロールする力がなく、慌ててしまった感じがありました。

ーー第3戦目のカナダ戦に向けて、チームをどのように指導しますか?

フィジカル的なスピードとか、体の当たる部分に関して、男子の選手とトレーニング(マッチ)を重ねて、フィジカルの強い相手に対応できるように準備してきましたけれど、やはりその部分で負けている部分があまりにも多かったと感じました。それを踏まえて、戦術的なところも含めて見直します。カナダ戦に向けて、しっかり自分たちの良さを見つめ直して、ブレずにやっていきたいと思います。

DF 乗松瑠華 (キャプテン)

ーー今日のスペイン戦で、チームとして、また、個人としてうまくできなかった部分はどんなところでしたか?

ボールの奪いどころがチームとして曖昧でした。攻撃では、スペインが全体的に良いバランスでプレッシャーをかけてきたので、うまく相手を外せませんでした。相手のプレッシャーを感じすぎて単純に裏を狙うことが多くなり、自分たちの良さであるパス回しがうまく発揮できなかったです。

ーー具体的に、試合の中でどんなことを修正できたら良かったと思いますか?

守備の時の中央のスライドの幅が広くなってしまい、2列目から飛び出してくる相手についていくと、逆に中盤が空いてしまって、セカンドボールが拾えなくなることがありました。今までの対戦相手よりも一人一人が本当にうまく、一人でマークを外せる選手が多かったです。プレスをかける位置などもっと一体感を持って決めて、守備の陣形をコンパクトにしなければ奪いきれないと思いました。

ーー次のカナダ戦はどんなところを修正して臨みますか?

攻撃も大事ですが、まず守備から入ることが大切だと思うので、狙いどころの共通理解を高めていきたいです。攻撃面では、相手がいくらプレスをかけてきても物怖じしないでしっかりポジションを取って、パスを出して動く、ということを続けていけたらなと思います。

ーーこの敗戦を、今後にどう活かしていきたいですか?

世界一になるために、すべてがうまくいくとは最初から思っていません。この試合を機にもっといいチームになれると思いますし、この試合があったから世界一になれた、と思えるようにしたいです。

(3)【選手コメント(U-20スペイン代表戦後)】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

松原渓の最近の記事