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7人制W杯、日本はこれで勝つ

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

2016年リオデジャネイロ五輪を占う7人制ラグビー・ワールドカップ(W杯)が今月28~30日、モスクワで開催される。10日、その男女日本代表候補が発表され、男子の瀬川智広監督は「ベスト8」、女子の浅見敬子ヘッドコーチは「トップ6」と目標を掲げた。

男子は3月下旬の東京セブンズの後、フィジー遠征などで強化・選考してきた。アタックを重視し、接点のブレイクダウンにこだわり、空いたスペースにボールを運んでいく「継続ラグビー」を目指している。瀬川監督は「課題は、いい位置にボールを運べていないということと、ボールキャリアのボールポジションが高いこと」と言う。

無名の吉野健生(JR東日本)や大学生の江見翔太(学習院大)、小原政祐(東海大)を抜てきした。W杯まで2週間。長野・菅平の直前合宿などで走り込み、瀬川監督は「戦う集団」をつくるという。「ブレイクダウンを有効に使いながら、ボールをリサイクルして、しっかりスペースに運んでいきたい。そこにおける“精度”で勝負です」

男子はまだ、世界での「経験値」が低い。テクニックはあっても、それを試合で出すフィジカルと精神的なタフさがまだ足りない。サッカー日本代表のごとく、「向上心」と「個の強さ」をいかに高めていくのか。「研ぎ澄ましたようなラグビーをやりたい。絶対勝つという真剣な取り組みと真剣なゲームをみてほしい」と言葉に力を込めた。

女子は、オーストラリア遠征でメンバー選考を進め、筋力トレーニングと食事の改善でからだをパワーアップさせてきた。故障していた藤崎朱里(購買戦略研究所)や横尾千里(早大)、三樹加奈(立正大)らが復帰、ベテランの兼松由香(名古屋レディース)もメンバーに入った。

「運動量とチームワークは世界一」と浅見HCは胸を張る。「継続ということでは、どうしてもボールキャリアの姿勢が高くなったり、ラストパスの精度が低くなったりしていた」と課題を挙げながらも、「ボールハンドリングはこの1年で随分よくなってきた。アタックの際のポジションがよくなり、継続のためのリアクションもよくなった」とチームの成長も強調する。

はっきり言って、世界の強豪と比べると、サイズもスピードもパワーも見劣りする。そんなチームが勝つためには、「7人が8人、9人、10人と思われるような戦いをしたい」とは浅見HC。運動量と、リアクションのスピードで勝負ということだ。

浅見HCは続ける。「仕事をしたら、すぐに次のプレーに移る。例えば、タックルしてすぐ立ち上がる。立って、前見て、すぐシフトして、ディフェンスに動いて…。女子はブレイクダウンというよりは、1対1の仕掛けを運動量で有利な状況でしたい。先手必勝というか、有利なカタチではやくボールをもらって勝負していきたい」

W杯の予選リーグの日本の相手は、男子がスコットランド、南アフリカ、ロシア、女子はロシア、イングランド、フランスと格上ばかりのチームである。

ただ7人制ラグビーは一瞬で勝負が決まる。試合は、前後半の7分ずつ。ゲームの入り、勢いが勝敗を左右する。強力なチームが不覚をとることもあれば、戦力的には劣勢のチームが番狂わせを演じることもある。つまり日本にもチャンスはあるということだ。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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