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統一戦が内定した亀田和毅の現在位置

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
前回エルナンデス戦で防衛を果たした和毅と亀田ファミリー

英国のマクドネルと2冠を争う

ボクシング界の風雲児ブラザーズ、亀田家三男、WBO世界バンタム級チャンピオン亀田和毅にビッグステージがセットされた。5月9日、米国テキサス州サンアントニオで同級WBA“レギュラー”王者ジェイミー・マクドネル(英)とのタイトル統一戦が実現する。バンタム級はWBC王者に山中慎介(帝拳ジム)が君臨、日本のファンには山中vs和毅がもっとも観戦意欲を刺激されるカードに違いない。だが、お楽しみはもう少し先でもいいだろう。まずはライバル王者の一人と2本のベルトを争い、どんな結果を残すか、興味津々だ。

昨年11月シカゴで防衛に成功した和毅は早ければ今月、あるいは4月頃にマクドネルと対戦すると思われた。試合締結まで時間を要したのは順番待ちが原因。昨年電撃契約した強力代理人アル・ヘイモンが華々しく発進したPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)は所属選手が多過ぎる。NBCをはじめテレビは複数の局がこぞって放送するものの、放映枠を確保するのは容易なことではなかった。和毅vsマクドネルは2年前、同じサンアントニオで元東洋太平洋&日本ライト級王者の荒川仁人と死闘を繰り広げたオマール・フィゲロア(米=前WBC世界ライト級王者)vsリッキー・バーンズ(英=前WBO世界ライト級王者)の一戦といっしょに行われる。

ヘイモン代理人の肝いりで決まった試合だが、もう一人、英国の新旗手、エディ・ハーン・プロモーターのヘルプも見逃せない。マクドネルとバーンズを傘下に置くハーン氏は同日自国で興行を開催するにもかかわらず、かねてからの願望だったアメリカ進出を果たす。そして約束どおり、持ち駒マクドネルの相手に和毅を抜擢した。同氏は米国と英国の2元中継を計画。米国、メキシコで知名度が高い和毅は今回、英国をはじめヨーロッパへ名前を売る絶好のチャンスとなる。

対するマクドネルは地元英国からコメントを発信。「カメダはハングリーで無敗。どの試合でもシャープに仕上げてくる。もし肝っ玉を見せなければ負けるかもしれない。でも私は合衆国へ行ってストップ勝ちする自信がある。カメダは終盤ダメージを被るだろう」

和毅が統一王者に就く可能性はどれだけあるのか?

今、英国の軽量級が元気だ。マクドネルのほか、1階級上のスーパーバンタム級ではスコット・クイッグ(WBA“レギュラー”王者)、カール・フランプトン(IBF)と2人の世界王者が君臨。加えて数人のコンテンダーがいる。もしかして今後、和毅が彼らとグローブを交えることもあるかもしれない。バンタム、その下のスーパーフライ級でも大英帝国は王者経験者を擁する。

まだ試合まで日数があるので詳しい予想は控えたいが、マクドネルは和毅と同タイプのアウトボクサーと分類できる。身長は公式データで173センチと和毅のそれより3センチ高い。リーチも長く懐が深い。こういうタイプは英国の軽量級に比較的多く、スキルは相当あると認識してよさそうだ。映像で見るマクドネルで目立つのはサイドステップの巧妙さ。「絶対相手の正面には立たない」という意識が強く、並みのプレッシャーでは追い詰めるのが容易ではない。この速い脚をどう止めるかが対戦相手の課題となる。

スピードとパワーは同格か。あるいはスピードでは和毅に支持が集まるかもしれない。パワーに関してはラスベガスで目の覚めるような一撃でプンルアン・ソーシンユーを沈めた和毅と王座決定戦でタブティンデーン・ナラチャワットをこれも一撃でタイ人を倒したマクドネルは、パフォーマンス的には肩を並べる。和毅が31勝19KO無敗、マクドネルが25勝12KO2敗1分とKO率では和毅に軍配が上がるが、おそらくパワーは甲乙つけがたいと推測される。

決定戦でタブティンデーンを倒し興毅のベルトを継承したマクドネル
決定戦でタブティンデーンを倒し興毅のベルトを継承したマクドネル

上位3人は不動

実力伯仲を物語るのが、主要メディアのランキングだ。まず米国のリング誌のバンタム級は次のようになっている。1.山中慎介、2.フアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)、3.アンセルモ・モレノ(パナマ)、4.亀田興毅、5.マルコム・ツニャカオ(フィリピン=真正ジム所属)、6.亀田和毅、7.ジェイミー・マクドネル・・・10.岩佐亮佑(セレス・ジム)

少し説明すると、2位のパヤノは3位のモレノに勝ってWBAの“スーパー”チャンピオンに就いた。だが決着は6ラウンド、自らの負傷による判定勝利で、酷評すれば“勝ち逃げ”。それほど実力差はない。とにかくWBAは1クラスにスーパー王者、レギュラー王者、暫定王者とベルトを乱立させ、ファンやメディアに混乱を招き悪評を買っている団体。かつてはその一つを保持した亀田家長男、興毅が4位というのは首を傾げるが、和毅とマクドネルの評価は正しいといえるだろう。

次にスポーツ専門ケーブルESPNのランキング。1.山中、2.パヤノ、3.モレノ、4.和毅、5.興毅、6.ランディ・カバジェロ(米=IBF王者)、7.マクドネル。続いて有力サイトのボクシング・シーン・ドットコム。1.山中、2.パヤノ、3.モレノ、4.和毅、5.マクドネル、6.フリオ・セハ(メキシコ)、7.ツニャカオ。最後に英国のボクシング週刊誌ボクシング・ニュースのものを紹介。1.山中、2.パヤノ、3.モレノ、4.興毅、5.マクドネル、6.和毅、7.ツニャカオ。

いずれのランキングでも1位から3位は不動。特に山中の実績が高く評価されている。机上のランキングと実際のリングは区別して考えなければならないが、仮に今、和毅と山中の試合が決定しても、前者の勝機は薄いと憶測される。和毅のハンドスピードとフットワークに山中が手こずる展開もあるかもしれないが、“ゴッド・レフト”ことWBC王者山中の迫力とパワーは、これまで和毅が対峙してきた相手とは異質なものに違いない。しばらくキャリアを積みながら総合力アップを図りたい。

勝利後はフィアンセへの熱いキスが定番
勝利後はフィアンセへの熱いキスが定番

マクドネル戦は4位争い?

では日本では身近な存在というべき輸入選手ツニャカオとの相性はどうか。日本のプロスペクトを軒並み撃破しているフィリピーノは、山中に善戦及ばず後半ストップされた。それでも37歳の今でも世界の10傑にコンスタントにランクされるのは驚き。この名脇役を和毅がどう攻略するか興味深い。予想を聞かれれば、WBO王者のスプリット判定(2-1)勝ちか。

上位のパヤノ、モレノに関しては変則気味でやりにくさで勝負するモレノに対し、パワーで押し込むパヤノは、その分ボクシングが正直。とはいえ、この2人に持ち味を発揮されると和毅は苦しい。和毅自身が相手の長所を消す段階まで力を磨くことが要求される。山中を含めた“3強”と現在負傷で休養中のIBF王者カバジェロは頭一つ和毅から抜き出ている印象だ。

そうなると目前のライバル、マクドネルがやはりもっとも力が拮抗している相手と思われる。和毅にとって文字通り今後をかける試金石となる。ちなみにボクシング・シーンで6位のセハはIBF王座決定戦でマクドネルと接戦を演じマジョリティー判定(2-0)で惜敗した選手。その意味では同サイトのランキングがもっとも現実を投影しているともいえる。

さて、読者の方はWBO,WBA,WBC,IBFといったアルファベット表示に混乱するのではないだろうか。主要タイトル認定団体が4つも存在するのはボクシング発展の足かせとなっている。和毅vsマクドネルで統一王者が誕生するのはいいが、WBAは正当な理由もなく、再びタイトル増設をはかるだろう。誰が真のチャンピオンなのか判断するのもファンの大事な役目となってくる。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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