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NYママの子育てビフォー&アフター! 自立した子供にするには?!

宮下幸恵NY在住フリーライター
子育てを語るNY在住ママたち

世界に広がるマザーズコーチの輪

今月上旬に発売された人気女性誌「LEE」6月号(集英社)で、「夫にも応用可! 魔法の言葉がけで怒らないママになる」というママ向けコーチングである『マザーズコーチ』が大特集されている。自分こそは髪の毛振り乱して怒鳴るママにはならない!と思っても、いざ子供が生まれてみると「こんなはずじゃなかった」とため息つくことは多々あるもの。怒鳴っちゃいけないと頭では分かっていても、ついカッとなって感情的に怒る→自己嫌悪→怒鳴っても子供は泣き止まない→あー、どうすればいいの? こんな負の連鎖、感じたことありませんか?

『マザーズコーチ』とは、そんな悩めるママがちょっとでも子育てを楽しめるようにと、ビジネスの世界で広く使われてきたコーチングの手法を、鹿児島在住の佐々木のり子さん(http://motherscoach.jp)がママ向けにギュっと凝縮したもの。子供のやる気を引き出し、自分で問題に気付き行動するような自立を促すママのコミュニケーション力をアップさせていく。コーチングといっても、ビジネスマンや、プロスポーツ選手のメンタルコーチだけではない。LEE紙面では佐々木さんが3人に体験コーチングを行い、ママ達の後日も掲載されている。さらに夫のやる気を倍増させる言葉がけの用例もあり必見の内容だ。

佐々木さんも24歳と21歳の息子を持つママ。長男が12歳、次男が9歳の時にコーチングに出会い勉強していくことで、「思春期が楽だった」と振り返る。現在、佐々木さん率いるマザーズコーチジャパンでは、ママとコーチの個別対応だけでなく、養成講座を行いこれまで100名を超える“ママコーチ”を誕生させている。今、その輪は日本にとどまらず、昨年からはニューヨークでも講座がスタート。第一期生、二期生合わせて20人ほどがマンハッタンで学んでいる。

さっそく、NY在住で1歳半から4歳までの子供を持つ30代ママさん4人(マザーズコーチ養成講座で学ぶママもいれば、コーチング初心者ママも)に集まってもらい、子育てのどんなことで悩み、どう対処して変わったのか? 子育てビフォー&アフターを語ってもらいました。

気持ちを受け止めただけで変化が!

大西潤子さん(左、2児のママ)と酒井瞳さん(右、4歳児のママ)
大西潤子さん(左、2児のママ)と酒井瞳さん(右、4歳児のママ)

4歳半と3歳になる2人の娘がいる大西潤子さん(30歳)は、次女が生まれて半年ぐらいから「もう大変で自分が滅入ってしまった」経験を持つ。長女もかまって欲しい年齢だが、まだまだ次女の世話にかかりっきり・・・。そんな時、「彼(夫)に『どうしたらいい?』って聞いたら『俺、分かんない』って。それで彼のほうから『カウンセリングに行ってみよう』と提案してきたんです」。

知り合いの大ベテランママさんに6回に渡って悩みを吐露。一番最初に言われたのは、「下の子を赤ちゃん扱いしすぎ。長女にあたるのではなく、下の子をちゃんとしつけたら上の子もちゃんとする」ことだった。まずは次女と向き合うこと。話す時は必ず目を見て話す。それだけでも、おもちゃやお菓子が欲しいと泣き叫んでも「今、ママはお話してるからあと5分待ってくれる?」と語りかけただけで、「うん、いいよ」。あれだけ泣き叫んでいたのに、自ら引いたことに「目からウロコだった」。

今では、仕事復帰を見据え不動産関係の資格取得の勉強を始め、ニューヨーク州公認試験をパスしたばかり。「娘2人が『ママは勉強してるから遊んでようね』って2人で遊んでくれてたのがすんごい助かった」と言う。

子供自ら行動するには?

4歳の娘がいる田島史子さん
4歳の娘がいる田島史子さん

4歳の娘を育てる傍ら、モデルとしても活動する田島史子さん(32歳)は、「できるだけ娘は何が嫌なのか、考えるようにしている」。例えば、友達と公園で遊んでいる時。みんな楽しそうにしているのに、娘だけ「帰りたい」と言い出しても、「家が好きだよね」「私と一緒にいたいよね」と気持ちを受け止め、先に帰ることもある。「娘は自分がやりたいと思ったことは絶対やりたいタイプ。お出かけも親が約束しているし」と親の都合を押し付けない。

「でも、学校は難しいよね」と続いたのは潤子さん。確かに、規律を求められる学校生活では、子供の気持ちを優先してばかりはいられない。

「うちはひどい。毎日(学校)行かないって泣くし」とは、4歳の息子がいる酒井瞳さん(30歳)だ。瞳さんはCPA(公認会計士)の資格取得にむけ、育児&家事の合間をぬって猛勉強し、マザーズコーチ養成講座で学ぶコーチの卵でもある。「講座で習う事は概念的なことだけど、それを活用出来るかが学びの本質。自分がどうにかしたい、問題だという状況で使えるか」だと試行錯誤が続いている。しかし、まずは子供の気持ちに言葉で返してあげる。それを繰り返していくと、嬉しい変化があったと言う。

「この間、授業参観だったんですけど、息子に『今日授業何やるの?』と聞かれて、『リトミックだよ』って言っただけなのに、『先生怖いから嫌や!』って車から降りなかったんです」

学校の前まで来て行かないと泣く息子を前にしたら、どうする?

瞳さんは、「何が嫌なの?」「先生が嫌なんだね〜」「皆待ってるよ」とじっくりゆっくり言葉をかけたそう。すると・・・。

「自分から『行く』って言ったんです。結局遅刻はしたけど、時間通りに行って子供がベソかいてるより、自分から『行く』って言ったのを大事にしたい。前だったら、『行かなあかん!』って言ってたと思う」

親に行けと言われたから行くのではなく、自分で決めて行動することが自立への一歩。行動変化を促したのは、子供の気持ちを受け止めたママの許容力に他ならない。

ママの昔話も効果的

現在、ニューヨークで講座を取っているママ、YKさん(38歳、息子6歳)は、子供が「出来ない!」「もう嫌だ!」と投げ出しそうになった時、「難しいんだ。確かに、嫌になるよね」と気持ちを受け入れたあと、「ママも昔ね〜」と自分の失敗話を息子に聞かせている。

今までなら「そんなこと言わないの、頑張って!諦めたらダメでしょ!」と無理に励ますことが多かったが、自分の失敗談に息子は「興味津々。涙もどこへ」。その分、立ち直るのも早くなり、「手応えを感じている」と言う。

家事しながら、掃除しながらの『ながら聞き』はよくないと頭で分かっていても、日々やる事満載のママにとっては、つい子供の顔を見ずに返事をしてしまうことだってある。ママさんの実体験を聞いていると、まずは子供の目を見て、しっかり話しを聞くという基本が大事なようだ。

やってくれない病になってませんか?

子供との関係以上に、話題がつきなかったのは『夫』との関係。朝寝ている旦那を起こす派か、起きるまで寝かせておく派か・・・など、「大きい子供」という夫をどう育児に参加させるのか、これは世界どこにいてもママの普遍のテーマのようだ。

4人のうち3人が国際結婚。ニッポン男児より育児に積極的に関わりそうなイメージだが、20か月の息子を持ち、米系航空会社に勤務するワーママであるゴリン友理佳さん(36歳)は国籍の違いを「関係ない」ときっぱり。「息子はまだ手がかかるけど、かわいい。でも夫は対等な関係だからか・・・。(記事のなかの)命令口調や不満そうな態度で言わないことの大切さ。わかっていても実践できていないから、これから気をつけよう」と言う。

「確かに日本の友達の話しを聞くと、いろいろ助けてくれる方かもしれないけど、上を見てもきりがないし下を見てもきりがないし。(男性を)立ててうまくやってくれるといいけど、うちはそれが課題。私がストレートに言っちゃうから。できる人のコツを聞きたい!」

以前、子育てに行き詰まった時に夫からカウンセリングを勧められた潤子さんは、「きっと相手も何をやっていいのか分からないんだと思う。私は『やってくれない病』になってて、『なんでこんなに大変なのに何もしてくれないの?』『もうちょっと早く帰ってきてよ!』と。だけど、彼は何をしていいのかわからなかったみたい」。それからは、具体的に何をして欲しいのか、言葉で伝えることで夫も関わるようになってきたという。

あくまで、コーチングとカウンセリングは別物。私自身、3歳の娘に振り回されながらマザーズコーチ養成講座を取っているママの1人だが、カウンセリングは通常の状態より少し落ちた状態から元に戻るためのもの、コーチングは普通の状態からさらに上へ行くためのものと解釈している。潤子さんの場合はカウンセリングという形で子育てと夫との関係が劇的に変わったが、自分にあった方法であれば、コーチングもカウンセリングでもいいのでは?

ゾンビ映画撲滅へ!

モデルママの史子さんの悩みは、夫の趣味。子供の前でホラー映画を見てしまうことだ。

「ゾンビ映画は見ないで、マフィア映画はやめてと言ってるのに、ほとぼり冷めたらまた見出す!」

「子供が寝るまで待てないの?」(友理佳さん)

「そう、待てない!(笑)。もう大きい子供。彼も彼で時間がないからなんだと思うんだけど、子供がちょっとお絵描き始めると、『スキあり!』みたいな感じ」

そんな夫にどう行動変化を起こしたらいいのか? 記事を見ながら史子さんは「コーチングを夫に実践するっていう考えがなかった。試してみます」と言う。

すぐにコーチングを受け入れられたのは、史子さんがコーチングを受けた下地があったから。日本で転職で悩んでいた頃、父から勧められたのがコーチングだった。

「父もコーチングを受けた事があって、自分にはすごくよかったからどうかって。週に1度、電話でコーチと話すんですけど、親にも友人にも言えない自分の気持ちを言うことができて、自分が話しをしていくと何をしたいのか、やりたいことがクリアになっていった」

その成功体験を生かし、田島家からホラー映画がなくなるのか?!「ゾンビ映画、マフィア映画撲滅のために頑張ります」(史子さん)

ファザーズコーチングがあっていい!

それぞれの子育てビフォー&アフターもあれば、友理佳さんのように夫への接し方に気をつけてみようとヒントを得たママも・・・。こういうちょっとした気付きが、子育てを変えていくきっかけになっていく。

でも・・・。

「なんでマザーズだけなんだろう? お父さんだって子供に向き合って欲しいし、お互い頑張ったらさらによくなるだろうし。結局人間のコミュニケーションなんじゃない?」(友理佳さん)

「ファミリーコーチングですね」(潤子さん)

「私は女性の方がコーチに向いてるって思うんです。マザーズコーチ養成講座では、『コーチは母親の横に立って、母親と同じ絵(=理想の子育て、夫婦関係)を見ている伴走者のようなもの』と言うんですけど、男性はどちらかというと同じ絵を見るというより、率いていく感じ。リーダーシップを求められているような気がする」(瞳さん)

先日の母の日に合わせ、米国内ではグリーティングカードを取り扱う最大手、アメリカン・グリーティング社のテレビコマーシャルが話題を読んだ。

「現場総監督」という以外は詳細不明の謎の仕事、「世界で最もタフな仕事」を何人かにインタビューして説明していくのだが、「同僚がお昼を食べても、あなたは食べる時間がありません」「24時間態勢です」「それでもお給料は支払われません」などなど言われると、全員が「あり得ない」「ひどい」と首を横に降るのだ。しかし、最後にその謎の仕事の正体が明かされる。

「それはお母さんです」

インタビューを受けた人は、自分の母を思い出し涙ぐむ人も・・・。そんな世界で最もタフな仕事をこなすため、マザーズコーチはママにとって救いになりそうだ。

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでママ向けコーチングの手法を学ぶ。NPO法人マザーズコーチ・ジャパンの認定コーチに。『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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