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やはり小中学生のSNS規制に賛成すべき?(続報)

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
スマホ

香川県でも、小中学生の夜間でのスマホ利用を制限する全県共通ルールを定め、学校関係、保護者関係に通知しました。

共通ルールでは、スマホやゲーム機器などでインターネットを利用する際、▽夜9時までに使用をやめる▽保護者と決めたルールを守る▽自分も他人も傷つけない使い方をする―などとした約束を取り決めた。

出典:県教委がスマホ共通ルール/制限で問題意識共有:四国新聞

この記事の中でも

神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は、「スマホはいずれ使うもので、全面禁止といった厳しい規制には反対だ」とした上で、「ある程度のガイドラインは必要。(共通ルールが)夜の使用をやめる一つのきっかけになるのではないか」と評価した。

出典:県教委がスマホ共通ルール/制限で問題意識共有:四国新聞

として、基本的に規制反対の立場を取っています。記事中では「夜のスマホ使用をやめる一つのきっかけになる」と書いていますが、それは正確ではなく、夜間のスマホ使用も絶対に禁止を奨めているわけではありません。基本的に規制には反対であっても、小中学生が何も考えず好き勝手に、あるいは野放しの状態で使う事には異論があるだけです。

反対の一つの理由はスマホに限らずネットを使いこなすためには、少なくとも中学生になれば習熟する必要があると考えているためです。ネットは他人と、あるいは機械とのコミュニケーションをとるための道具です、コミュニケーションの習熟には自我が確立した前後には行う必要があります。しかしネットを使いこなす事を奨励はしますが、無条件に、言い換えれば無秩序に使う事を進めているわけでは決してありません。では、なぜ小中学生の夜間スマホ禁止に賛同しているかと言えば、昨年末に投稿した下記の記事にまとめています。特に

LINE等のSNSではグループ通信機能があり、ある閉ざされたグループの中で、文字やスタンプと呼ばれる画像を貼る事によって会話、つまりコミュニケーションを取ります。それは、それぞれのいる場所や時間にとらわれることなく、そして望むと望まざるとに関わらず、無制限に続けられる場合も少なくありません。勉強する時間、あるいは寝る時間になれば、自分から進んで抜ければ良いのですが、仲間外れになる事を恐れて、誰もが抜けられなくなるのです。形式的な制限であれ、それが設けられる事によって、抜け出る口実になるのです。

出典:愛子様に失礼ではないか!やはり小中学生のSNS規制に賛成すべき?:Yahoo!Japanニュース(個人)

の点が大きいでしょう。しかし最も大きな理由はスマホの利用方法について家族で話し合うきっかけになることです。スマホを、いわゆる「野放し」で使わせるのではなく、親も含めてスマホやネットをどのように使えば良いか、さらになぜ夜9時以降の利用の制限が議論されるのかを考えなければなりません。「夜9時以降のスマホ禁止」というのはあくまでも象徴的な意味しか持ちません。もちろん厳守する必要はないと言っているわけではありませんが、単に規則だからということではなく、なぜ利用制限しなければならないかを親も含めて理解してほしいのです。スマホやネットは道具であって、それを使いこなしてこそ意味があります。決して、それに使われる、支配されてはならないのです。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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