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無線LANの不都合な真実!?

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
無線LAN(写真:アフロ)

無線LANは便利なものだが、無線LANルータの設定はちょっとしたコツがいる。また、端末でも設定が必要であり、問題が発生するとどう対処してよいかわからなくなったという人もいるだろう。

出典:無線LANがつながらない時に試したい5つの解決策【マイナビニュース】

公衆無線LANの利用で、「今まで(昨日は)つながっていたのに急につながらなくなった!?」というときの原因で、意外に多いのは無線LANのチャネル干渉です。公衆無線LANの利用者が急激に増えたこともあってチャネル(周波数帯域)が足らなくなっているのです。無線LAN(ルータ)が設置されているからといって、何人でも使えるわけではありません。携帯電話でも同じなのですが、同時に利用できる人数には上限があるのです。利用する人が増えると、まずチャネル干渉が起こり、著しく速度が落ちたり、場合によっては切断されたりします。さらに増えると最初からつながらないのです。公衆無線LANが設置されているからといって、必ずつながる事は保証されていません。

セキュリティ面でも、無線LAN特有の問題が発生しやすい。無線LANのセキュリティ問題は、大きく分けると「不正侵入」「不正APへの接続」の2つがある。双方ともネットワーク接続が目に見えないという、無線LANの性質と表裏一体の問題だ

出典:便利なはずの「無線LAN」が学校を苦しめるこれだけの理由 【TechTarget Japan】

無線LANには不正アクセスの問題が付きまといます。一般には無線LANの利用に関しては、無線LAN自体を暗号化し、かつその無線LANを利用するための認証を厳格にする事が求められます。有線LANでも厳格な認証が求められる事から、セキュリティに関しても、無線LANも有線LANと同じように考えがちです。有線LANの場合、社屋内であれば、そのアクセスに関して、人の目で監視する事が出来ます。物理的にアクセスする為には、その社屋内に入らなければならないのです。しかし無線LANの場合、その電波が届く範囲では、ユーザ認証さえ通れば、人の目の監視が行き届かない場所からもアクセス可能なのです。無線LANで利用する電波の届く範囲を限定する事は容易ではありません。

さらにもう一つ、不正アクセスポイントの問題が有ります。これも電波を届く範囲を制御できない事が理由です。先の不正アクセスとは逆で、無線LANを利用する正規ユーザのエリアに電波を紛れ込ませ、偽のアクセスポイントを作り、そこへ誘導するのです。誘導された後はIDとパスワードの入力を求められ、それらを不正に搾取されたりします。

無線LANの利用は、一般家庭であっても、これらは注意すべき事柄ですが、厳格な運用が求められる組織では特に注意を要する点であり、安易に無線LANを推奨できない理由でもあるのです。

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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