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師走台風27号、来週フィリピン上陸か 

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
12日午前9時時点の予想進路図。ウェザーマップ

台風27号が発生しています。12月の台風は、毎年約1個のペースで発生するため、これといって特に珍しいものではありませんが、今年が特別なのは、1月から毎月台風が発生していることです。これは、1951年の統計開始以来初めてです。また、去年に遡れば、連続19ヶ月も台風が発生していることになります。

予想進路

台風27号は日本時間12日午前9時現在、中心気圧1000hPa、最大風速18メートル(最大瞬間風速25メートル)で、時速20kmの速さで西北西に進んでいます。周辺の海水温を見ると、28℃以上と、台風を発達させるのに十分な温度であり、今後も強くなる見込みです。来週水曜には、フィリピン中部に上陸するもようです。

(最新の台風情報はこちらから)

2年連続12月台風直撃

27号が上陸するとなると、2年続けて12月に台風が直撃することになります。去年の12月は、22号と23号が、それぞれフィリピン中部と南部に上陸し、死傷者の数は合わせて1,000人以上に上りました。12月は日本にとっては冬ですが、熱帯の海上はまだまだ暖かく台風が発達するのです。

フィリピンの台風事情

フィリピンは、毎年8〜9個の台風が上陸し、世界で最も台風(ハリケーンなど含む)のリスクが高い国です。台風は日本でも恐れられていますが、それでも年平均上陸数は2〜3個です。たしかに、台風の進路のど真ん中に、国土が南北に連なっていたら、台風が世界一多いのも無理はありません。

最も台風の被害を受けやすいのは、北部ルソン島と中部ビサヤ諸島の東側です。これらは、人々の居住地域にも台風が関係していて、台風がやってくる東側の地域は、西に比べて明らかに人口が少ないようです。例えば、世界第4位の過密都市である首都マニラは、西に位置しています。

濃い色ほど、台風のリスクが高い。30号で被害が出たタクロバンは東に位置している。
濃い色ほど、台風のリスクが高い。30号で被害が出たタクロバンは東に位置している。

懸念される27号の被害

27号は、人口がそれほど集中していない中部ビサヤ東部周辺に上陸の見込みですが、その後フィリピンを横断するために、マニラなど人口過密地帯にも影響を与える可能性があります。さらに、上陸後に速度を落とす見込みで、嵐が長引くことも考えられます。

2013年台風30号の経路図。気象庁
2013年台風30号の経路図。気象庁

また、フィリピン中部は数多くの島々からなっているために、高潮の被害が大きくなる恐れがあります。2013年台風30号がフィリピンに壊滅的被害をもたらした時も、5m以上の高潮が発生していますが、27号はその時と同じような進路をとる見込みです。

27号は史上最強だった30号ほどの勢力はありませんが、徹底した避難準備態勢が取られ、被害が広がらないことを祈ります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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