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春の嵐・夏の猛暑が生んだ、2016年のボージョレヌーボー

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(ペイレスイメージズ/アフロ)

ハロウィンにオクトーバーフェストと、近頃、日本の秋が国際化しているように思います。ボージョレヌーボーもその一つで、毎年多くの人々が楽しみにしているお祭り行事です。

そのボージョレファン待望の解禁日がいよいよ明日(17日)に迫っています。去年のボージョレヌーボーは「歴史に刻まれるほどの最高の出来」と称されましたが、今年は一体、どうなのでしょうか。

賞賛の出来

ボージョレヌーボーの第一人者、ジョルジュ・デュブッフ氏によれば、今年は深いルビー色、ジューシーな果実味、そしてイチゴやラズベリーを連想させるフレッシュな香りが特徴的とのことです。

さらに、デュブッフ氏のみならず、専門家の間でも、今年の出来はなかなか評判が良いようです。

猛暑による好影響

その原因は、この夏の記録的な天候にあります。

7月にはパリで39℃を記録したり、先々月は過去50年で最も暖かく、晴天の多い9月となるなど、今年の夏フランスは、またとない晴天と高温に恵まれました。ぶどうの甘みを左右する糖は光合成によって作られるので、日射が多く、気温が高いと、植物が日中盛んに光合成を行い、甘くなるのです。

今年は、夏の猛暑のおかげでぶどうに糖が良くのり、甘みの凝縮したワインができたと考えられます。

グレートビンテージ2年説

また、ワインには、2年続けてグレートビンテージが生まれることがあります。1985~1986年、1989~1990年、2009~2010年のように、今年もまた2015年に引き続いて、最高のワインとなる可能性が期待されます。

春の嵐による不作

しかし、ワインの生産量はというと、記録的な減少となっています。

好天だった夏に反して、今春フランスは、度重なる嵐の襲来を受けました。ピンポン玉の大きさの雹が降ったり、豪雨により洪水が発生したり、遅霜がおりるなど悪天が続き、ぶどうに打撃を与えました。ボージョレ地方にも、ぶどうの実が大きくなる5月に大量の雹が降り、深刻な被害が発生しています。

結果、フランス全体でみると、ワインの生産量は去年と比べ12%減で、これは過去30年で最悪の状態だといいます。このため、2016年のワインの価格高騰が懸念されているのです。

ちなみに、世界全体でも5%減で、フランス以外の国々でも、悪天候が収穫減につながりました。豪雨に見舞われたアルゼンチンでは35%、チリでは21%、またポルトガルや南アフリカでは約20%、ワインの生産量が減ったと伝えられています。

2016年のボージョレヌーボーは、極端な天気が生んだ、稀少な極上ワインと言えるかもしれません。解禁日が待ち遠しく感じられます。

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NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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