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「藤原の効果」のルーツは

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
明治の気象学者・北尾次郎

今朝、TBSの12階にある食堂に行くと、いつものおじさんから「台風が二つあるから、動きが分からないんだよね」と、言われました。

今回、台風27号、28号の進路に関連して、「藤原の効果」という言葉が急に注目を浴びています。我々、古い世代の気象関係者にとっては、たいへん懐かしい言葉でもありますので、いま多くの方に知られることは、台風に関心を持っていただく上でも良い事なのでしょう。

ただ、この「藤原の効果」という言葉がひとり歩きして、台風進路予想に妙なバイアスがかかるのは少し違うのではないかと感じています。

そもそも「藤原の効果」とはなんでしょう?

気象庁の台風用語の項目には、「2つ以上の台風が接近して存在する場合に、台風がそれらの中間のある点のまわりで相対的に低気圧性の回転運動をすること」となっています。つまり台風が接近(大体1400キロ以内)した時以外は、関係がないということになります。

その昔、まだ気象衛星もレーダーも無い時代、南海上の台風の動きを把握するのは、容易ではありませんでした。しかし先人たちは、島や船舶から送られるわずかな気象データを頼りに天気図を作成し、その解析によって様々な理論をつくりあげたのです。

「藤原の効果」もそのひとつで、元中央気象台長・藤原咲平氏が、台風の相互作用について、紹介したのが始まりとされています。さらに、この藤原氏が理論の参考にしたと言われるのが、明治の気象学者・北尾次郎の「地球上大気ノ運動及ビ颶風ノ理論」のようです。(颶風=ぐふう・台風のこと)

さて、「藤原の効果」というのは、確かに現代でも一見分かりやすく、気象解説にはもってこいの言葉です。ただ現代の台風進路予想は、この複雑な大気の運動も当然、折り込んでいるわけで「藤原の効果」があるから予想が困難ということではありません。

また予報円が大きいのは、台風を流す上空の風(一般流という)が弱いからであって、「藤原の効果」のせいとは言えません。

今回の台風については、27号と28号の距離が離れている(約2000キロ)ことから、相互に干渉するというより、それぞれが独立した台風と考えた方がいいように思います。

さらに言えば、いま重要なのは27号で予想される大雨であって、ここであえて、「藤原の効果」なる言葉を持ち込むのは、かえって視聴者にとっては混乱をきたすのではと、思った次第です。

「気象談話室・北尾次郎の肖像」(廣田勇著)

http://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2010/2010_12_0035.pdf#search='%E5%8C%97%E5%B0%BE%E6%AC%A1%E9%83%8E'

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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