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花散らしは、下品な言葉か

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
東京・赤坂 (撮影:森田正光)
東京・赤坂 (撮影:森田正光)

今日(6日)は穏やかな天気になっていますが、明日の明け方から低気圧が日本海で急激に発達し、全国的に風と雨が強まる見込みです。

気象庁発表の地方気象情報によると、九州北部では今後20メートル以上の風速が予想され 、また近畿地方でも15メートル以上の強風が吹く見込みです。

2012年4月3日、今回のような日本海低気圧で春の嵐になり、首都圏を中心に、交通機関に大きな混乱が起きたことがあります。今回も、早めの対応が必要でしょう。

ところで月曜日(4日)の事ですが、今回の予想される荒天について、私が担当する天気予報の中で「木曜日は花散らしの雨になるでしょう」とお伝えしました。

すると、その「花散らし」という表現に対して、ある方から「花散らし」と言うのは、古来は艶っぽい表現で下品な意味を含むので、その言葉を使うのは控えたほうがいいのではとのご意見をいただきました。

では、 その「花散らし」の本来の意味はなんでしょう。

広辞苑には「三月三日を花見とし、翌日若い男女が集会して飲食すること。(九州北部地方でいう)」と書いてあります。まぁ、現代風に言えば、夜通しで行われた今の時代より自由な合コンのようなものでしょう。

確かにそう考えれば艶っぽいというか、あまり適切でないという意見も分からないではありません。ただ、こうした批判めいた意見を聞くと、経験の浅い気象解説者はその意見にたじろいで、つい自己規制をして無難な表現になってしまいがちです。

しかし、すでに死語と化した本来の意味を持ち出して、現在ふつうに使われている「花散らし」という表現を抑えようとするのは、いかがなものかと私は思います。

言葉は恒に変化し、我々気象解説者にとっては、季節や気象に関する言葉は語源も含めて、慎重に扱わなければならないのは言うまでもありません。

ですが、あまりに本来の意味に囚われると、自由な表現を狭めて息苦しい気象解説になってしまいます。

ちなみにNHKの気象ハンドブックによると、

「もともとの意味は、…略… 旧暦3月3日に海辺で催す男女の酒盛りのことを言ったとされている。最近は桜の花を散らす強風を指して言うこともある。」

となっています。

明日(7日)は、満開の地方は「花散らし」となるのは間違いないのですが、まだつぼみが残っている地方は今回の嵐でもまだ花は残り、首都圏ではこの週末もギリギリお花見が楽しめそうです。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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