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東京「観測史上初」の積雪に疑問 観測記録は大手町も発表すべきである

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
「東京」の観測地点の移転について(気象庁観測部)より一部加工

昨日、東京では54年ぶりに初雪を観測し、さらに東京管区気象台は、北の丸公園の積雪を確認して、”東京における11月中の積雪の観測は、1875年の統計開始以来観測史上初です”との発表をしました。

ところで、昨日の東京の初雪は大手町で確認され、積雪はそれより約900メートル離れた北の丸公園での観測です。なぜ場所が違うかというと、東京の観測場所は2014年12月から、それまでの大手町に変わって北の丸公園に移転されたからです。大手町の気象データは都市化によって大きな影響を受けるようになっていますので、その代替として北の丸公園に観測場所が移った事は納得できます。

しかし、その移転したばかりの北の丸公園の積雪をもって”統計開始以来観測史上初”というのは、誤解をもたらすのではないでしょうか。

実は、大手町から北の丸公園に観測場所を移転するにあたって、気象庁は同時比較観測を行っています。それによると、積雪時はいずれも北の丸公園の方が多く、単純平均では5センチほど北の丸公園が多くなる傾向があります。(上記図・事例が少ないので、統計的意味はない)

ちなみに今回、大手町(気象庁構内)での積雪は気象庁は観測していないとの事ですが、昨日午後、私どものスタッフが見に行ったときには、積雪はありませんでした。

つまり、今回の積雪を「観測史上初」というのは、北の丸公園での検証期間を入れたとしても、たった数年間のデータで言っているにすぎないわけです。

蛇足ながら、今朝(25日)の東京(北の丸公園)の最低気温は0.3度でした。この温度だとふつう霜や氷が張るものですが、初霜・初氷の発表はありませんでした。

霜や氷の確認は人間の目で行うため、気象庁職員がいる大手町での発表となりますが、大手町は北の丸より平均で1.4度ほど高いので、こうした齟齬が生じます。

そもそも論で言うと、目で見る観測は大手町、測器による観測は北の丸と、分かれているのが問題だと思います。

北の丸は北の丸として、そして大手町に現在もあるアメダスのデータを、参考記録としてでも公表していただくよう気象庁にはお願いしたい気持ちです。

東京管区気象台「東京における積雪の観測について」2016年11月24日発表

http://www.jma-net.go.jp/tokyo//sub_index/koho/hodo/sekisetu2016.pdf

注 気象庁は1875年以来、過去3回移転。

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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