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ブルーブルズ戦間近のキヤノン小野澤宏時、ジャパンは「エディーさんの好きに…」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
2011年のワールドカップニュージーランド大会でプレーする小野澤(写真:ロイター/アフロ)

ラグビー日本代表として国内歴代2位となる81キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を持つ小野澤宏時が、いまのジャパンなどについて語った。代表チームは9月、イングランドで4年に1度のワールドカップに挑む。

37歳の小野澤は2003、07、11年のワールドカップなどに出場し、テストマッチ(キャップ対象試合)では世界歴代4位の55トライを記録。グラウンド内の状況を観察して周りに明確な指示を出し、球を持てば「うなぎステップ」と称される走りで相手の守備網をするすると駆け抜ける。

現代表指揮官のエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)とは、13年まで所属したサントリーで10~11年に監督と選手の間柄だった。12年にジョーンズHCが代表を率い始めた頃も代表の一員で、14年にはチームメンターという役職を任せられた。

小野澤が在籍して2季目となるキヤノンは、7月31日、東京・町田市陸上競技場で南アフリカのブルーブルズと激突する。

南アフリカは代表チームが世界ランク2位というラグビー大国の1つ(日本は12位)。なかでもブルーブルズは南半球最高峰スーパーラグビーのクラブ、ブルズのメンバーにより編成される。故障から復帰して間もないため、自身の出場は流動的だとする小野澤だが、「(このゲームは)若手には意味がある」と語っていた。

以下、一問一答。

――ブルーブルズ戦。中央大学の1学年後輩である、河辺康太郎さんが実行委員を務めています。

「彼から『こんな企画があるんだけど』と何となく聞いていて、決まった時は『本当に来るんだ』と。僕も社会人2年目の春にウェールズ代表と、その次にサラセンズとやらせてもらった。早めに経験できたことが、後のプラスになった部分もあります。だから今回のことも、キヤノンみたいながつがつした若手の多いチームにとっては、いい。ひとつの目標設定をしてそこへチャレンジするなかで、世界の空気にも触れられる。それによってチームがどう変わるかについても、興味があります」

――小野澤選手は、そのウェールズ代表戦での活躍を代表入りに繋げました。

「当時は、シンプルなことしか考えてなかったですよ。『やるからには勝つし』『ボール持ったらトライ取るし』みたいな。で、あのウェールズ代表戦があっての、その後の10何年、ですからね。その意味でも、(キヤノンの)若手にはチャンスですよ。ジャパンはワールドカップで南アフリカと戦う。その南アフリカのチームに対して、今回、いいプレーをした…という評価があれば…。大体、いません? 毎回、ギリギリ(大会直前の選出)でワールドカップに出ちゃう奴。ここで結果を出しておけば、権利は持っていられるかもしれないです」

――いま、ジョーンズHCとは連絡を取り合っていますか。

「いつも連絡はなく。常にホームページチェックです。メンターの就任ですらそうでしたから。嫁が日本協会のページを観て『メンター就任って書いてある』と。読んでみたら『メンターとは…』と書いてある(「ギリシャ詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」に登場する賢人、Mentor(メントール)が語源。「指導者」「助言者」「相談相手」「師匠」を意味し、新規参加者や後輩に対して、広く相談にのり、助言を与える人を指す」と表記)。そうか、このようにしろ、ということなんだな、って」

――事前に電話をもらったわけでもなく!

「ええ。ただ、エディーさんのチーム作りのイメージもわかりますし、そこで年長者がどう振る舞えばいいかもわかりますから。何かを言われればその通りにしますし、いま、何も言われていないということは、現在のスタッフで上手く回っているのかな、という判断をしています。言われた時にリアクションするだけ」

――9月。「ちょっとイングランドに来てくれないか」。あり得る話ですが。

「そうなったら、行きます。ジャージィ渡しをしてくれと言われたら、ぱっと渡して、帰ります。この間もそうでした。オールブラックスの時もそうですし(13年11月1日、東京・秩父宮ラグビー場で世界ランク1位のニュージーランド代表と対戦)、始発の新幹線で大阪に行って『今季のジャパン初試合で初キャップの選手にジャージィを渡して一言、話す』みたいなこともありました(14年4月26日、アジアパシフィックドラゴンズ戦と思われる)。選手の乗ったバスを見送って、じゃあ帰ります、と。大阪滞在1時間ちょっと。マイナスな要素はひとつもない。皆でプラスの方向へ行ければ。(イングランドへも)ベスパに乗って行こうかと思いますよ」

――いまのジャパンについて。

「全力応援でしょう。勝つもんだと思って、待ってます。周りでも『勝てるの?』みたいな雰囲気を刷り込まないようにするのがいいんじゃないかと思っていまして。確かに、世界的に観たら日本はチャレンジする立場。それが大きな大会で、初めて経験する人間はパニックになるかもしれない。だから、パニックになるかもしれないという目線すらも、なくていいんじゃないかなと。『勝てますか?』と聞くということは、もう、負けると思っているから聞いている。それすらも『どうですか?』くらいの聞き方でもいい。淡々と、粛々と準備をさせてあげて、彼らの大会にすることが大事かなと。こちらは組織がイメージすることに対して、プラスになることをやっていければ」

――出場した方が口を揃えて「ワールドカップは特別な舞台だ」と言います。

「ね、そういうことになるじゃないですか。要は、皆がそう思っている大会に出るというだけで、プレッシャーを感じてしまう。(ラグビーでは)いかにいつも通りにやれるかどうかが大切であって、それが一番、難しい。大会に出るだけでいつも通りにはならないということがわかったうえで、いつも通りにしなきゃいけないんです。だったら少しでも周りからの『何か』は取り除いでいけたらいい。エディーさんはワールドカップの2大会で、負けたのはオーストラリア代表の監督としてやった03年の決勝戦だけ(07年は南アフリカ代表アドバイザーとして優勝)。その人がイメージするものに対して、邪魔なものは排除して、プラスになるものは採り入れる。それでいいのでは。エディーさんの好きにやらせてあげるのがいいんじゃないですか。きっと、大丈夫です」

■町田ワールドマッチラグビー2015

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ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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